ソーシャルイノベーションの事例 - KickStart

前回はソーシャルイノベーションの場としてのBOPに注目し、語義的な起源、定義、その特徴について述べてきました。本blogのテーマである、ソーシャルイノベーションのためのデザイン思考、および、デザイン手法について説明する前に、これから7回に渡って、ソーシャルイノベーションの担い手としての、企業、NPO、大学、研究機関を紹介し、具体的なプロダクト、サービス、システムについて説明していきたいと思います。特に前半3回で紹介する3団体は、それぞれが異なるビジネスモデルを採用しており、ソーシャルエンタープライズとして成立しています。

今回紹介するのは、KickStart(キックスタート)[1]です。KickStartは1991年にMartin FisherとNick Moonによって設立されたApproTECを起源とし、2005年に名称を変更し、現在のKickStartとなりました。彼らは、KickStartのミッションを「数百万人の人々の貧困からの救出」と定めています。彼らは、ケニアやその他の国々における”持続可能な経済成長”と”雇用創出の促進”を目的として、小規模で利益を出せる企業を設立し、経営を行うことを目的とした起業家によって利用される技術に注目し、これを開発し、広めていくことで、この目的を達成しようとしています。

[1] KickStart

さて、彼らのビジネスモデルは、貧しい起業家が自分自身の手で利益を生み出すビジネスを作り出すために利用可能な、お金を生み出すシンプルなツールを開発し、販売し、普及させるための5つのステップを基本としています。この5ステップの原文と拙訳を以下に掲載いたします。

貧困を解決するためのシステマチックアプローチ(5つのプロセス)

1. 機会を同定する。
どんなビジネスが人々、あるいは、その場所で利益を生み出すか?
正しいビジネスモデルを選択することが、新しいビジネスの成功を決定づける最大の要因である。

2. 製品をデザインする
どんな新しいツールが、新しいビジネスをを可能たらしめるのか?
私たちは収入を生み出すツールをデザインすることから始める。

3. サプライチェーンを確立する
新しいツールをどうやって生産するのか?
最も優れた発明もまた、それが製造され、普及しなければ世界を変えることができない。

4. 市場を作り出す
どのようにすればわずかなお金を稼ぐために大きな投資をするよう説得できるだろうか?
われわれは可能な限り多くの人を貧困から救い出したい。

5. 測定し、突き進む
計画通りに進んでいる?
損益分岐点に到達すれば、我社は全ての販売に対して利益を得るようになる。われわれはこの利益を新たな技術の開発に再投資するだろう。

1. Identify Opportunities
What business will be profitable for these people, in this place?
Selecting the right business model is the most critical factor in determining the likely success of a new business.

2. Design Products
What new tools will make this possible?
We start with a challenge – design a tool that will generate income.

3. Establish a Supply Chain
How can we produce these?
The greatest invention cannot change the world if it does not get manufactured and distributed.

4. Develop the Market
How do we convince someone with little money to make a big investment?
We want to get as many people out of poverty as possible.

5. Measure and Move Along
Is this going as we planned?
Once we reach the tipping point, KickStart will make a profit on every sale. We will reinvest these to develop new technologies.

プロダクト

ここで、Kicstartの製品を2つ紹介しましょう。

スーパー マネーメーカー ポンプ

スーパーマネーメーカーポンプは、1998年10月に95ドルで発売が開始された手動灌漑ポンプです。23フィート(7m)の高さの井戸、川、池から、水を引き上げることができ、ポンプから23フィート(7m)上まで水を撒くことができます。1日に2エーカーまでの土地の灌漑に利用できます。灌漑を通じて生産された果物や野菜を通じて初年度に平均1000ドルの産んでいます。

ヒップポンプ

スーパーマネーメーカーポンプと比較して、低コスト、軽量で、持ち運び可能な手動灌漑ポンプとしてデザインされたのがヒップポンプです。2006年に30ドルで発売されました。スーパーマネーメーカーが21kgであったのに対して、ヒップポンプはわずか4.5kg。スーパーマネーメーカーポンプと同様に、吸引深度は7m、汲み上げ高度も7mのスペックが確保されており、1日1 1/4エーカーの灌漑に利用できます。

これら2つのポンプは、2008年12月31日末段階で、115,000台販売され、77,000の企業を生み出し、380,000人の人々を貧困から救ったと報告されています。[2]

[2] a PDF version of the brochure

デザイン原則

最後に、KickStartの10のデザイン原則を紹介しましょう。

1. 収入を生むこと
どのツールにも利益を出せるビジネルモデルが付いていること。

2. 投資に対する見返り
KickStartのツールを購入した全てのひとは、6ヶ月以内にその投資に対する見返りを十分に得られること。

3. 値段の手頃さ
ターゲットユーザに対して価格が手頃であること。我々は、世界でも最も貧しい人々に対してデザインを行っている。小売価格は、数100ドル以下、理想的には150ドル以下でなければならない。

4. エネルギー効率
全てのツールは、人力で動く。人の力の機械の力への変換は極めて効率的でなければならない。

5. 人間工学と安全
われわれのツールは、長期間、ストレスやけがの心配なしに使われるほど安全でなければならない。

6. 携帯性
ツールは、購入した店から徒歩、バイク、ミニバスで家まで運べるほど小さく軽くなければならない。

7. 設置と使用の容易さ
全ての製品は、追加の訓練やツールを必要とせず、簡単に設置・使用ができなければならない。

8. 強度と耐久性
われわれの製品は、限界まで使用されるので、酷使に耐えるようにデザインされる必要がある。その上で、全ての製品に1年の保証を付与している。

9. 生産能力を踏まえたデザイン
本来ならばツールは、大量生産されるべきであるが、途上国では生産能力が限られている。われわれはこれらの限界を踏まえたデザインをする必要がある。

10. 文化的な受容
地元の文化は、新しい技術を取り入れても変化はしない。その技術を、むしろ地元の文化に適応させねばならない。

1. Income Generating
Every tool must have a profitable business model attached to it.

2. Return on Investment
Anyone who purchases a KickStart tool will be able to fully recoup his or her investment in six months or less.

3. Affordability
The tool has to be affordable to the target audience. Since we are designing for some of the world’s poorest people, this means that retail prices have to be less than a few hundred dollars, ideally less than $150.

4. Energy-Efficient
All of our tools are human powered so they must be extremely efficient at converting human power to mechanical power

5. Ergonomics and Safety
Our tools must be safe to use for long periods of time without stress or injury.

6. Portability
Tools must be small and light enough to carry home from the store by foot, bike or minibus.

7. Ease of Installation and Use
All of our products must be easy to set up and use, without additional training or requiring any additional tools (not even a hammer or screwdriver)

8. Strength and Durability
We are asking people to make a significant investment and we know that our products will be pushed to their limits, so we design and build to withstand abuse. We then offer a one-year guarantee on all of our products.

9. Design for Manufacturing
To be truly effective, a tool has to be produced in large quantities, but in the developing world manufacturing capacity is limited.
We design around these limitations.

10. Cultural Acceptability
Local culture will not change to adopt a new technology. The technology has to be adapted to the culture.

まとめ

KickStartの作り出す製品のコンセプトは、地元の人々が起業家として利益を生み出すことが可能であり、持続可能な社会の形成、雇用の創出、経済の発展に貢献する製品、と言えます。投資に対するリターンを明示的に起業家の卵に提示することが、購入の説得材料となっています。購入者の成功事例がさらなる新たな起業家を生み出すポジティブスパイラルの好例と言えるでしょう。KickStart社は製品を製造し、利益を乗せて販売する、という最も基本的なビジネスモデルを採用していますが、企業としてBOPマーケットにおいて利益を創出し続けています。

次回はNPO(非営利法人)の代表として、米国NPOのKopernik(コペルニク)を紹介いたします。

続きを読む

キーワードとしてのBOP

前回は、イノベーションについて、その定義と派生系について述べてきました。今回は、ソーシャルイノベーションと密接に関わっているBOP – Bottom of the Pyramid – について説明をしたいと思います。最近では、BOPもバズワード化していますが、その起源と定義について改めて整理をしてみましょう。

BOPとは何か?

BOPとは、その名が示すようにピラミッドの底部を指します。この場合のピラミッドとは、社会経済上のグループを指し,頂上側が所得上位のグループ、そして、底部に向かっていくにつれて所得が減少することを意味します。その人口分布は,ピラミッドのかたちのごとく、上から下へ向かって広がっていきます.BOPと呼ばれるグループは、このピラミッドの中で最も大きく、”財政的に”貧しいグループとされています。世界の人口は2010年10月現在で69億人。このうち先進国の人口はわずか10%にすぎず、残り90% – 約58億人 -は、BOPに属していると言われています[1]。

[1] Smith, C. E. (2007). Design for the Other 90%. New York, US, Editions Assouline.

BOPという単語そのものは、フランクリン・ルーズペルト(Franklin D. Roosevelt)によって、1932年のラジオ演説の中で初めて使われたとされていますが、一般的には、PrahaladとHartによって1988年に初めて、”1日2ドル以下で暮らす人々”と定義されました。そして、この定義が、彼らの著書[2][3]を通じて広がっていきました。

[2] Prahalad, C. K. (2004). The Fortune at the Bottom of the Pyramid: Eradicating Poverty Through Profits. New Jersey, US, Wharton School Publishing.
[3] Hart, Stuart L. (2010). Capitalism at the Crossroads: Next Generation Business Strategies for a Post-Crisis World (3rd Edition). New Jersey, US, Pearson Prentice Hall.

さて、21世紀目前の2000年9月、ニューヨークで国連ミレニアムサミットが開催されました。このサミットで採択された「国連ミレミアム宣言」に基づいて、2015年までに達成すべき目標として8つの項目からなる「ミレニアム開発目標(MDGs:Millennium Development Goals)」[4]がまとめられました。

1. 極度の貧困と飢餓の撲滅
2. 普遍的初等教育の達成
3. ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上
4. 幼児死亡率の削減
5. 妊産婦の健康の改善
6. HIV/エイズ、マラリアその他疾病の蔓延防止
7. 環境の持続可能性の確保
8. 開発のためのグローバル・パートナーシップの推進

これら8つの目標のうち、BOPの定義にも含まれる、現金収入に強く関連する項目が1の”極度の貧困と飢餓の撲滅”です。外務省の該当ページ[5]には目標とターゲット、および、指標が掲載されていますので引用します。

A:2015年までに1日1ドル未満で生活する人口の割合を1990年の水準の半数に減少させる。
1.1 1日1ドル(購買力平価)未満で生活する人口の割合
1.2 貧困ギャップ比率
1.3 国内消費全体のうち、最も貧しい5分の1の人口が占める割合

B:女性、若者を含むすべての人々に、完全かつ生産的な雇用、そしてディーセント・ワークの提供を実現する。
1.4 就業者1人あたりのGDP成長率
1.5 労働年齢人口に占める就業者の割合
1.6 1日1ドル(購買力平価)未満で生活する就業者の割合
1.7 総就業者に占める自営業者と家族労働者の割合

C:2015年までに飢餓に苦しむ人口の割合を1990年の水準の半数に減少させる。
1.8 低体重の5歳未満児の割合
1.9 カロリー消費が必要最低限のレベル未満の人口の割合

[4] UN, ミレニアム開発目標
[5] 外務省, ミレニアム開発目標

ミレニアム開発目標の発表以降、先進国における企業、大学、研究機関において、BOPを対象とした取り組みが増加傾向にあると考えられます。昨今ではMIT D-lab、Stanford d.school、TU Delftなどの活動が目立ち、多くのプロダクトが産み出されています。また、世界経済フォーラム(ダボス会議)では、2000年以降、社会起業家によって生み出されたモデルを推進することを目的とし、ソーシャル・アントレプレナー・シュワブ財団と共同で社会起業家を選出し、部会および総会に招待する試みが実施されています[6]。

[6] Schwab Foundation for Social Entrepreneurship

デザイン手法

10%に向けたデザイン手法

さて、BOPを対象としたプロダクト、サービス、システムをデザインを行う場合、これまで利用されてきたデザイン手法は有効と言えるでしょうか?このデザイン手法は、言うまでもなく、先進国で利用されるモノを開発するために構築された手法であり、いわば、10%の人々に向けたデザイン手法だということを頭に入れておく必要があります。

従来のプロダクトデザイン,サービスデザイン,社会システムデザインの分野におけるデザイン手法は,ユーザとモノ – デバイス,プロダクト,ソフトウェア – との関係性に主眼を置くものでした。例えば,IDEOやAdaptive Pathは,エスノグラフィのアプローチを導入することで、この関係性を解き明かそうと試みてきました。すなわち、対象の観察を重視し、ユーザとモノの関係性から解決すべき問題点を発見しようとしてきました。さらに、ここで得られた知見をもとに、架空のユーザとしてのペルソナを設定し、提案しようとする製品をペルソナがどう扱うかについてのシナリオを策定することで、より魅力的なユーザ体験を提供しようと試みてきました。

90%に向けたデザイン手法

しかしながら、BOPを対象とした場合、従来のようにモノとユーザだけでの関係性をデザインするだけでは不十分であり、”マクロ”と”ミクロ”の視点を利用したアプローチを採用する必要があると考えます。これは、BOPにおけるデザインプロセスは、グローバル経済の下で高い類似性を持つ環境、および、背景を持つユーザを対象とする、10%に向けた従来のデザインプロセスとは根本的に異なるためです。まず、各フィールドで起きている現象に着目した上で,マクロな視点からフィールドごとの特殊性を構造的に理解する必要があります。さらに、ミクロな視点として人々の関心を構造的に把握する必要があります。

Polakはその著書『Out of Poverty』において、BOPにおける問題解決のための12のステップを示していますが、最初の3点は、フィールドの特殊性を理解するためのステップであるだけではなく、人々の関心を構造的に把握するためのステップとも考えられます。BOPを対象としたデザインプロセスでは、これら2つののプロセスを経て、それぞれのフィールドに対する最適な技術を用いてプロダクト、サービス、システムを設計することが求められるのです。

Step 1: Go to where the action is.
現場へ行こう。

Step 2: Talk to the people that have the problem and listen to what they have to say.
問題のある人に話しかけ、彼らの言葉に耳を傾けよう。

Step 3: Learn everything you can about the problem’s specific context.
問題が起きている特殊な状況についてできる限り学ぼう。

Step 4: Think big and act big.
大胆に考え、大胆に行動しよう。

Step 5: Think like a child.
子供のように考えよう。

Step 6: See and do the obvious.
目に見える状態にしよう。

Step 7: If somebody has already invented it, you don’t need to do so again.
もし誰かがすでに開発済みなら、もはややる必要はない。

Step 8: Make sure your approach has positive measurable impacts that can be brought to scale. Make suire it can reach at least a million people and make their lives measurably better.
あなたのアプローチが、計測可能なポジティブなインパクトを持っていることを確認しよう。少なくとも100万人の生活をよりよくしよう。

Step 9: Design to specific cost and price targets.
目標となるコストと価格を設定し、デザインしよう。

Step 10: follow practical 3 year plans.
3年間の実践的な計画に従おう。

Step 11: Continue to learn from your customers.
顧客から学び続けよう。

Step 12: Stay positive: Don’t be distracted by what other people think.
ポジティブでいよう。他のひとの意見に惑わされないように。

[6] Polak, P. (2008) Out of Poverty: What Works When Traditional Approaches Fail.San Francisco, CA, Berrett-Koehler Pub.

なぜBOPか?

最後に、なぜBOPに注目するのか、その理由について3点ほど述べたいと思います。

まず第1に、マーケットの規模です。全人類の90%、58億人、という数字はすでに述べました。あるフィールド用に向けて開発されたプロダクトを別のフィールドでそのまま適用することはBOPの場合、難しいケースが多いと考えられますが、チャンスは単純に9倍あると考えられます。

第2に、イノベーションに対するコストの問題です。先進国におけるイノベーションの場合、最先端技術の開発に対するコストは莫大なものとなり、もはや低資本でのイノベーションは困難であると言えます。しかしながら、BOPの場合、現地での運用が前提とされ、現地のローカルマテリアルを利用するなど適正技術を用いたイノベーションが推奨されることから、先進国に比べて低資本にてイノベーションを実現する可能性が残されています。

最後に、解決すべき膨大な数の問題の存在です。水、電気、道路などのインフラから、保健衛生、教育、産業化など各フィールドごとに解決すべき問題は膨大な数に上ります。このような状況に対して、フィールドを適切に理解し、デザイン思考を活用することで、多くの問題を解決することが急務といえます。

まとめ

今回は、ソーシャルイノベーションの場としてのBOPに注目し、語義的な起源、定義、その特徴について述べてきました。これまでの説明の中で、BOPという言葉、特に、Bottomという単語に違和感を感じる方もいるのではないでしょうか。この点に関して、あくまで、収入という一軸で捉えたときの視点に過ぎないことを頭にいれておく必要があります。確かに、経済面ではBottom(底)とみなされる収入しか得られていない点は事実です。しかしながら、そのグループに属する人々が彼らの生活において必ずしも不満を抱いているというわけではないことも事実です。彼らは彼ら独自の価値観、文化に基づき満足して生活をしています。

さて、経済的には満たされなくても生活に満足している彼らに対して、わたしたちは何ができるのでしょうか?彼らの自由を尊重するならば、彼らの価値観を揺るがす権利はなく、我々の考え方を押し付けることも許されません。その点でいえば、彼らに対するプロダクト、サービス、システムの提供は必要ないのではないか?という意見すらあります。とはいえ、教育を受けたい、きれいで安全な水を飲みたい、現金が欲しい、という欲求が現地に存在することも事実です。このような欲求を抱く人々に対して、現地の価値観に沿った選択肢を提供することが重要であると私は考えています。そのような選択肢を提供した上で、最終的に現地の人々が自身の関心に基づいて判断することで、持続的な関係が構築されると考えています。

次回からは、ソーシャルイノベーションを実現してきた企業、NPO、大学、研究期間をシリーズで取り上げていきたいと思います。

続きを読む

Innovation and Social Innovation

前回は、本blogのタイトルにも使用している2つのキーワード – デザイン思考とソーシャルイノベーション – に関して、それぞれの定義を中心に論じました。今回は、キーワードのうちの1つであるイノベーションについてもう少し掘り下げてみたいと思います。

イノベーションという単語は、企業広告、大学教育、研究、様々な場所で用いられ、それを目にする人も若干食傷気味かもしれません。何も考えずに単語だけ使用するとたまに恥ずかしい目に会うこともあるので、まずは整理しておく必要があります。今回は、イノベーションの起源から始まり、派生したいくつかのイノベーションの類型について述べていきたいと思います。具体的には、シュンペーターによるイノベーション、破壊的イノベーションと持続的イノベーション、オープンイノベーション、ソーシャルイノベーションです。これらのそれぞれについて、起源と定義をまとめてみましょう。

イノベーション

前回ソーシャルイノベーションの定義の部分で少し述べましたが、そもそもの英語におけるイノベーションの意味とは、”Something newly introduced, such as a new method or device”、すなわち、新しい手法や道具などどいった新しく生み出される何か、とされています。これに対して、経済学上におけるイノベーションという語句は、1912年に発行された経済学者のシュンペーターの著書『経済発展の理論』の中で5つのパタンとして彼によって定義されました。以下に原文と拙訳を掲載いたします。

1. The introduction of a new good – that is one with which consumers are not yet familiar – or of a new quality of a good.

2. The introduction of a improved or better method of production, which need by no means be founded upon a discovery scientifically new, and can also exist in a better way of handling a commodity commercially.

3. The opening of a new market, that is a market into which the particular branch of manufacture of the country in question has not previously entered, whether or not this market has existed before.

4. The conquest of a new source of supply of raw materials or half-manufactured goods, again irrespective of whether this source already exists or whether it has first to be created.

5. The carrying out of the better organization of any industry, like the creation of a monopoly position (for example through trustification) or the breaking up of a monopoly position.

1. 消費者にとって馴染みのない新しい製品、あるいは、より良質な製品の導入

2. 改良された、あるいは、より良い生産方法の導入。
これは科学的に新しい発見に基づくものではなく、ある商品の商業的扱いに関するより良い方法を含むものである。

3. 新しいマーケット(市場/販路)の開拓。
当該国の産業部門が従来は参加していなかったマーケットの開拓。このマーケットが以前存在したかどうかは問わない。

4. 原材料や半製品の新しい供給源の開拓。
この場合も、供給源が既存のものであるか、あるいは初めて創り出される必要があるかどうかは問わない。

5. 生産のためのよりよい組織の実現。
すなわち、例えばトラスト化などによる独占的地位の形成、あるいは、その打破など。

さて、シュンペーターは、イノベーションの種類は5種類存在し、すべてのイノベーションはそのいずれかに当てはまる、と主張します。従来、日本語におけるイノベーションは”技術革新”と訳され、上の5つのタイプのうち1のみがイノベーションと見做されてきました。これは、「もはや戦後ではない」のフレーズが記載された、1956年の『経済白書』の中で、イノベーションが初めて登場した際、イノベーション=技術革新と翻訳されたためであると言われています。この経済白書については経済白書データベース[1]で原文を確認することができます。

[1] 経済企画庁, 1956

本blogは、このような”イノベーション=技術革新”ではなく、”イノベーション=5つのパタンのいずれか”という視座を継承し、この5つのパタンを踏まえたソーシャルイノベーションを実現するための理論と実践について論じることを目的としています。

さて、ここからはイノベーションの派生系として、先に挙げた以下の3つについて述べていきたいと思います。

  • 持続的イノベーションと破壊的イノベーション
  • オープンイノベーション
  • ソーシャルイノベーション
  • 持続的イノベーションと破壊的イノベーション

    まず、持続的イノベーションとは、従来製品の改良を進めるイノベーションを指します。一方で、破壊的イノベーションとは、 短期的には従来製品の価値を破壊するかもしれませんが、全く新しい価値を生み出すイノベーションを指します。

    これら2つのイノベーションは、ハーバード・ビジネス・スクール教授のクレイトン・クリステンセン(Clayton M. Christensen)が、1997年の著書『The Innovator’s Dilemma: When New Technologies Cause Great Firms to Fail』(邦題『イノベーションのジレンマ – 技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』)のなかで初めて提唱した概念です。彼は、持続的イノベーションに集中する巨大企業は、改良することだけに注力し、顧客の需要に目が届かず、機能的には劣るものの別の新たな特色を持つ製品を作り出す新興企業に敗れる現象を”イノベーションのジレンマ”として理論化しました。

    例えば、CDやDVDは、より音質において劣るダウンロード形式のデジタルメディアによって破壊されたテクノロジーです。この現象の背後にある原因として、1990年代に、シングルCDの出荷が徐々に停止されたことにより、消費者が個別の楽曲を購入する手段を失ったことが指摘されています。この市場は、当初はNapstarなどのピアツーピアのファイル共有テクノロジーに、やがてiTunes Music Store、Amazon.comなどのオンライン販売業者によって席巻されていきました。

    オープンイノベーション

    次に、オープンイノベーションは、ハーバード・ビジネス・スクール助教授のヘンリー・チェスブロウ(Henry W. Chesbrough)が2003年に出版した『Open Innovation: The new imperative for creating and profiting from technology』(邦題『OPEN INNOVATION―ハーバード流イノベーション戦略のすべて』)において提唱した概念であり、企業が、ある技術を発展させようとする時、内部のアイディアだけではなく、外部のアイディアを使うことができる、もしくは、使うべきであるという考え方です。オープンイノベーションの背後にある考え方は、企業は完全に自社の研究に頼る余裕はなく、代わりに他の会社からモノや特許を購入したり、ライセンスを受けたりすべきであるという思想です。さらに、内部の発明はその会社のビジネスで使われるべきではなく、その会社の外に出されるべきである、という思想をも含みます。

    例えば、P&Gは、技術や知的財産について社外と広く交流し、より大きな価値を生み出すオープン・イノベーションモデルとして”Connect + Develop”[2]を推進しています。具体的な成功事例として、2005年より同社が販売している「プリングルズ・プリンツ」があります。これは、1枚1枚のポテトチップスに、スポーツや音楽に関するクイズや豆知識を印刷したものです。社内には、1枚1枚に画や文章を印刷する技術はなかったものの、イタリアの大学教授が経営する小さなパン屋がその技術を持っていることを突き止め、これを改良することで、2年かかるとされた市場への投入期間を1年に短縮し、開発コストも大幅に削減できたと『Connect and Develop: Inside Procter & Gamble’s New Model for Innovation』[3]において報告されています。

    [2] P&G, Connect + Develop

    [3] Huston and Sakkab, 2006

    ユーザイノベーション

    ユーザーイノベーションは、マサチューセッツ工科大学のエリック・フォン・ヒッペル(Eric von Hippel)教授が提唱するイノベーションの発生原理であり、供給者としての製造業者、提供者よりも個別のエンドユーザやユーザコミュニティによって多くのプロダクトやサービスのイノベーションが起きるとするものです。彼は、この原因を、多くの消費者が避けている問題に対して、一部のユーザが取り組み、既存の製品を修正したり、完全に新しい製品をつくりだすなどして、その問題を解決するため、と説明しています。彼のオープンイノベーションに関する2冊の著作(『Democratizing Innovation』『The Sources of Innovation』)はオンラインにて公開されており、誰もが自由にダウンロードすることができます[4]

    [4] Hippel, 1988, 2005

    ソーシャルイノベーション

    最後に、ソーシャルイノベーションです。すでに第01回にて述べたように、ソーシャルイノベーションは、Phillsら[5]により、以下のように定義されています。

    A novel solution to a social problem that is more effective, efficient, sustainable, or just than existing solutions and for which the value created accrues primarily to society as a whole rather than private individuals.

    すなわち、ある社会的な問題に対して、「従来の方法よりも、より効果的、より効率的、より持続性がある”新しい”解決法、そして、個人よりも全体としての社会に対する価値を生み出す、”新しい”解決法」と定義されています。

    特に、単なるイノベーションとソーシャルイノベーションとの違いとして「起業家、投資家、あるいは消費者などの個人に対する価値よりも、全体としての公共や社会に対する価値を生み出すかどうか、このバランスがどちらに触れるかで区分する」とPhillsは主張しています。本blogのスタンスも、このPhillsの定義を継承したいと思います。

    [5] Phills Jr., Deiglmeier and Miller, 2008

    ソーシャルイノベーションとソーシャルアントレプレナーシップ、ソーシャルエンタープライズ(社会的企業)は併せて語られることが多いですが、Phillsらは、これらとの違いをも、同論文の中で明確に述べています。ソーシャルアントレプレナーシップ、ソーシャルエンタープライズはともに、その目的を社会的な価値の創造においています。前者は、新たな組織を立ち上げようとする人々の個人的な資質に焦点を当てており、後者は、組織に焦点を当てています。しかしながら、両者とも、そもそもの起源が非営利セクターであり、結果として、彼らの活動を非営利に制限しているという点で限界を孕んでいます。一方で、ソーシャルイノベーションは、社会全体に対して、財政的かつ社会的な価値を提示するメカニズムとして、これら2者とは根本的に異なるものであるとPhillsは主張します。

    なお、実際のソーシャルイノベーションの事例は、第4-10回に渡って、企業、NPO、大学、研究機関別に紹介していく予定です。

    まとめ

    今回はイノベーションについて、その定義、および、派生系について述べてきました。本blogは、キーワードの1つにソーシャルイノベーションを掲げています。ソーシャルイノベーションに注目する理由は、すでに述べたように、単なるイノベーションが、経済的な価値な価値のみを提供することを目的とするのに対し、ソーシャルイノベーションが、社会全体に対して、社会的な価値、および、経済的な価値、という2つの価値を提供するためです。このようなソーシャルイノベーションを実現するためのデザイン思考、およびデザイン思考を活用したデザイン手法を本blogでは実践例を交えて、紹介いきたいと考えています。

    さて、次回はソーシャルイノベーションの場(フィールド)としてのBOP(Bottom of the Pyramid)と呼ばれる社会経済学上のグループについて考えていきたいと思います。

    続きを読む

    イントロダクション – No Tinkering, No Innovation

    はじめに

    このblogは、これまでの私の活動[1]に基づいて、ソーシャルイノベーションのためのデザイン理論および実践についてわかりやすく解説をしたいと思い立ち上げたものです。一部の内容についてはすでに雑誌や論文で掲載しているものですが,字数,図表などの資料の制限もないblogというメディアを最大限に活用し、全25回の連載を通じてデザイン理論と実践についてひと通り説明を行う予定です。原則として更新は週1回のペースを保ちつつ、半年で終了させたいと考えています。気ままにプロダクトやイベントなどの告知もするかもしれません。全25回のタイトルは、ナビゲーションメニューのコンテンツに掲載しています。なお、タイトルはIDEOのTim BrownとJocelyn WyattのStandford Social Innovation Reviewの記事[2]を意識しています。

    [1] http://www.dangkang.com
    [2] Brown and Wyat, 2010

    ターゲット

    このblogの主なターゲットは、
    ・デザイン思考を学びたいエンジニア
    ・デザイン思考をソーシャルイノベーションに活かしたいエンジニア
    ・ソーシャルビジネスに注目し、プロダクト、サービス、社会システムのデザインに携わろうとしている方
    を特に意識しています。ソーシャルイノベーションに限らず、エンジニアに限らず、実際に現地に赴いて調査を行い、何かをデザインしたいと考えているすべての方に対して何らかの有益な情報を提供できるのではないかと考えています。

    デザイン思考

    このblogは、タイトルにもあるように、”デザイン思考”と”ソーシャルイノベーション”という2つのキーワードに注目しています。両者とも時としてバズワードとして一人歩きしがちな単語ですが、基本的な考え方と実際のプロセスについて整理しておきましょう。

    最初に思考法としてのデザインに対する考えを示した人物は、経済学者・社会学者・心理学者のカーネギーメロン大学ハーバード・A・サイモン(Herbert Alexander Simon)です。1967年の著書『The Sciences of the Artificial』(邦題『システムの科学』 )の中で、彼は、望ましい性質をもった人工物をいかにつくり、いかにデザインするかについての教育に対する重要性を主張しました。そして、人工物のデザインのカリキュラムについて7つの項目を紹介しています。本ブログでは、これらの項目について詳細な説明を避けますが、サイモンは、社会をデザインするためのカリキュラムとして6つの項目も挙げていた点に注目すべきでしょう。

    人工物のデザインのためのカリキュラム

    1. 評価理論:効用理論,統計的決定理論
    2. 計算方法
    a.リニア・プログラミング、制御理論、ダイナミック・プログラミングなどの最適代替案選択のアルゴリズム
    b. 満足代替案選択のためのアルゴリズムと発見的方法(ヒューリスティックス)
    3. デザインの形式倫理:命令倫理と叙述倫理
    4. 発見的探索:要素分解と目的 – 手段分析
    5. 探索のための資源配分
    6. 構造の理論およびデザイン組織化の理論:階層システム
    7.デザイン問題の表現

    社会をデザインするためのカリキュラム

    1. 限定された合理性
    環境の複雑さが、適応システムの計算能力よりもはるかに大きい状況下での、合理性の意味。
    2. 計画設定のための「データ」
    予測方法,制御過程における予測とフィードバックの使用。
    3. 顧客の識別
    専門家-顧客関係、顧客としての社会、駆け引きの当事者としての顧客。
    4. 社会計画における組織
    社会計画は、主に組織内部の人によって作られるが、それと同時にその社会計画の重要目標が、一般の社会組織や特定の個別組織を作ったり変えたりする。
    5. 時間的・空間的視界
    時間の割引き,進歩の定義,注意の管理。
    6. 究極目的のないデザイン活動
    将来の柔軟性のためのデザイン、目的としてのデザイン活動,進化するシステムのデザイン過程。

    デザイン思考(Design Thinking)という言葉それ自体が著作物として姿を現すのは、建築家ピーター・ロウ(Peter G. Rowe)の著書『Design thinking』(邦題『デザインの思考過程』 )を待たねばなりません。ロウのデザイン思考は、建築家あるいは都市設計立案者によって利用されてきた問題解決プロセスに対して、システム思考に基づいて説明を試みるものでした。それは、「ユーザの関心を理解」し、「より優れたプロダクトをデザイン」するための方法論としてのデザイン思考ではありませんでした。

    このようなデザイン思考の方法論を一躍有名にした会社があります。デザインコンサルティングファームIDEOですね。IDEOの設立者であるディビッド・ケリー(David Kelly)は、彼の著書『The Art of Innovation』(『発想する会社』)の中で、IDEOにおけるデザインプロセスを以下のように説明しています。

    プロセス

    Understand

  • ユーザの欲求や問題について理解する。
  • ユーザがいかに製品やサービスを知覚しているかを理解する。
  • Observe

  • 何が人々を困惑させているか、何が好きで何が嫌いか、現在のプロダクトやサービスによって明らかになっていない潜在的な余裕などを、実世界の人々を観察することで発見する。
  • 収集したデータをすべてひとつの部屋に集める。
  • Visualize

  • 新しいコンセプトとそれを使う顧客を視覚化する。
  • ロールプレイ、ストーリーボード、プロトタイプなどを活用する。
  • Evaluate & Refine

  • アイディアのプロトタイピングを行う。
  • いくつかのプロトタイプを制作する。
  • Implement

  • 製品化を行い、マーケットへ送り出す。
  • さらに、IDEOの現在のCEOであるティム・ブラウン(Tim Brown)はHarverd Business Reviewの彼の記事(『Design Thinking』)[3]の中で、以下のようにデザイン思考とデザインプロセスを定義しています。

    [3] Brown, 2009

    定義

    デザイン思考は、技術的に実現可能なものやビジネス戦略を顧客価値や市場機会へと転換可能なものと、人々の要求とを一致させるために、デザイナの感覚と手法を利用する方法、である。

    プロセス

    Inspiration

  • 問題や機会を定義する。 
  •  

  • 世界を見る – 人々が何を考えているのか、何をしているのか、何を要求しているのかを観察する。
  • プロジェクトルームで情報を共有する。
  • 情報を整理し、可能性を統合する。
  • Ideation

  • ブレインストーミングを行いアイディアを生成する。
  • プロトタイピングを行いテストを行う。
  • Implementation

  • 市場に送りだすための計画を立てる。
  • ここまで3つのデザインプロセスを紹介してきました。各プロセスの区分的な違いはあれ、全てに共通していることは、以下のプロセスです。

    1. フィールドへ赴きデータを取得する
    2. 課題を発見し、仮説を構築する
    3. プロトタイピングを行う
    4. フィールドでテストを行う
    5. 製品を実装する

    1のプロセスでは、フィールドでのデータの収集が不可欠です。1で得られたデータを目的に併せて質的、もしくは量的に分析を行い、2のプロセスにおいてモデルを構築します。3-4のプロセスは、特に何度も繰り返す必要があります。様々な技術を試し、課題をもっともエレガントに解決できるプロトタイプを構築するこのプロセスを”Tinkering”や”Iteration”と呼びます。Tinkeringの語句的な意味はLongman Dictionary of Contemporary English[4]では、以下のように記載されています。

    To make small changes to something in order to repair it or make it work better

    [4] Longman Dictionary of Contemporary English, Tinkering

    今回の記事のタイトルは、”No Tinkering, No Innovation” です。このフレーズは、私が勝手に造ったいかにもな言葉ですが、イノベーションに不可欠な非常に重要なプロセスであると考えています。何より、ステップ2の段階 – つまりはアイディアであり、仮説の段階 – では、プロジェクトは10%も完了していません。その仮説が望ましい結果をもたらす保証はありませんし、受け容れられる可能性も保証できません。何より現物が無い時点でモノとして存在していません。テストできる状態となって初めて50%の完成といってよいでしょう。80%の完成度まで近づけるためにユーザテストをさらに繰返す必要がありますし、100%の完成度、すなわち、ユーザが満足するレベルまで引き上げるためには、80%の状態まで費やしたコストを同じだけのコストがさらに必要となるでしょう。最も重要なことはプロトタイピングとテストの繰返しでしか、プロダクト・サービスの完成度は決して向上せず、イノベーションも実現できないということです。

    ソーシャルイノベーション

    ここからはソーシャルイノベーションにトピックを移します。イノベーションの定義および起源、様々な派生形については、第01回で扱う予定ですので、今回は簡単にイノベーションの定義を紹介しつつ、ソーシャルイノベーションの定義、イノベーションとソーシャルイノベーションの違いについて触れておきます。

    イノベーション

    そもそもの英語におけるイノベーションの意味とは、”something newly introduced, such as a new method or device”ですが、経済におけるイノベーションという語句は、1912年に発行された経済学者のシュンペーターの著書『経済発展の理論』の中で5つのパタンとして定義されています。原文とそれに対する詳細な対訳については第02回で説明しますので、今回は日本語で簡潔に説明いたします。

    1. 新しい製品、もしくは良質な製品の導入
    2. 新しい生産方法の導入
    3. 新しいマーケット(市場/販路)の開拓
    4. 原材料や半製品の新しい供給源の開拓
    5. 新しい組織の実現

    これら5つのタイプのイノベーションのいずれかに当てはまる成果物が産み出されたとき、それをイノベーションと呼びます。ソーシャルイノベーションも同様に、これら5つのパタンのうちいずれかに該当すると考えられます。

    ソーシャルイノベーション

    ソーシャルイノベーションは、Phillsら[5]によって、”ある社会的な問題に対して、従来の方法よりも、より効果的、より効率的、より持続性がある新しい解決法、そして、個人よりも全体としての社会に対する価値を生み出す、新しい解決法”と定義されています。さらに、単なるイノベーションとソーシャルイノベーションとの違いとして、”起業家、投資家、あるいは消費者などの個人に対する価値よりも、全体としての公共や社会に対する価値を生み出すかどうか、このバランスがどちらに触れるかで区分する”とPhillsは主張しています。本blogでは、このPhillsの定義を継承します。

    [5] Phills Jr., Deiglmeier and Miller, 2008

    まとめ

    さて、今回の記事は、イントロダクションとして、タイトルにもある”デザイン思考”と”ソーシャルイノベーション”の定義について概観してきました。デザイン思考については、起源から最新の考え方までを俯瞰し、本blogにおけるスタンスを説明いたしました。また、ソーシャルイノベーションについては、イノベーションとソーシャルイノベーションの違いについて確認し、本blogにおけるスタンスを説明したしました。イノベーションについては第02回、デザイン思考については第11回でより詳細について述べる予定です。

    次回は、イノベーションの起源と派生系についてもう少し掘り下げていきたいと思います。

    2012.02.16
    サイモンの引用部に誤りがあったため修正いたしました。また、ロウのデザイン思考に関する説明を追記いたしました。

    続きを読む