ソーシャルイノベーションの事例 - d.school

前回は、ソーシャルイノベーションの担い手としての大学・研究機関の第1弾として、MIT D-Labを取り上げ、12のコースの内容とそれぞれのコースの代表的なプロジェクト例を紹介いたしました。MIT D-Labの特徴は、”適正技術と持続可能性のあるソリューションの提供”と言えます。

今回は、ソーシャルイノベーションの担い手としての大学および研究機関の第2弾として、通称d.schoolことInstitute of Design at Stanford [1]を紹介いたします。

[1] d.school

d.schoolの正式名称は、Hasso Plattner Institute of Design at Stanfordです。ドイツのソフトウェア企業であるSAPの共同設立者、Hasso Plattnerが、35,000,000 USドル(約31億円)を寄付し、2005年にIDEO創設者兼CEO(当時)であり、スタンフォード大学教授のDavid Kelleyがディレクターとなって設立されました。David Kelleyがディレクターであることからも容易に推測されますが、d.schoolは、彼およびIDEOの影響を強く受けており、d.schoolのキーワードは”デザイン思考”と言えます。d.schoolはデザイン思考を学び、実践するための場と考えてよいでしょう。

ビジョン

d.schoolは4つのビジョンをもっています。これらに共通するキーワードは、デザイン思考、チーム、コラボレーションです。以下ではそれぞれについて説明していきましょう。

1. We believe great innovators and leaders need to be great thinkers
(優れたイノベータ、リーダーは優れたデザイン思考の実践者である必要がある。)

d.schoolは、デザイン思考を通じて人々を結びつける場所として設立されました。ここでは、エンジニアリング、医学、ビジネス、人文科学、教育における学生と教員が、デザイン思考を学ぶたためのハブとして機能しており、人間が中心となって、大きな問題を解決すべく協力しています。学生は、デザイン思考の方法論を別の新しい場所に適用し、新たな問題の解決を試みることを求めれています。

2. We believe design thinking is a catalyst for innovation and bringing new things into the world.
(デザイン思考は、イノベーションのための触媒であり、世界に新しきモノをもたらす。)

d.schoolのコースとカリキュラムは、デザイン思考に基づいています。エンジニアリング、デザインの手法を活用するだけではなく、芸術からアイディア、社会科学から道具、ビジネスの世界から洞察を、これらの手法と結びつけています。このプロセスそのものが、異なるバックグラウンドの仲間をゴールにむかって結びつける役割を果たしています。また、d.schoolは、デザインプロセスに焦点を当てています。それは、学生に対して、あらゆる分野において革新的な結果をもたらす方法論を身につけさせたいというモチベーションに基づくものです。つまり、イノベーションではなく、イノベーションを起こす人材としての”イノベータ”を作り出すことに焦点を当てています。

3. We believe high impact teams work at the intersection of technology, business, and human values.
(大きなインパクトをもたらすチームは、テクノロジー、ビジネス、人間における価値の交差する場所において作用する。)

我々の経験上、チームにおけるアイディアが、人間、ビジネス、技術的な要因を統合するときにこそ、チームにとって大きなインパクトがもたらされるということを我々は知っています。d.schoolはStanfordにおけるこれらの領域における活動を結びつけ、決して交わらないエキスパートをチームとして交わらせることを狙いとし、実際に実現しています。

4. We believe collaborative communities create dynamic relationship that lead to breakthroughs.
(コラボレーションをするコミュニティは、ブレークスルーをもたらす動的な関係を創りだす。)

d.schoolは、大学や産業から様々なエキスパートが集まり、異なる視点が要求されるプロジェクトを実践する場です。まさにこの場こそが、いきいきとしたインタラクティブな環境を創り出しています。コミュニティの多様性こそが、新たなイニシアチブを確立させ、独自の規範を統合すると考えられています。コラボレーションのカルチャーは、単なるアイディアを飛び越えます。ラディカルなコラボレーションが、イノベーションのカルチャーを作り出すと彼らは信じています。

クラス

d.schoolのクラスは、スタンフォード大学の大学院生でなければ受講できません。これはD-Labと同様ですね。以下では2011年のSpring Semesterにおいて開講中の授業について簡単に説明してみましょう。

Improv and Design

即興劇による舞台とデザイン思考の交差点を模索する実践的なクラス。

Transformative Design

インタラクティブ技術が、行動の変化を促すべく、いかにデザインされるべきかについて調査を行うクラス。

Creativity and Innovation

組織における個人、ならびに、チームの創造性を刺激することに焦点をあてたクラス。

d.medical: Design Thinking for Better Health

アメリカの医療支出のうち75%は、生活習慣病のために使われています。患者がライフスタイルを変えることができれば、多くの問題は避けられます。このクラスでは、チームでデザイン思考を活用して、この変革にチャレンジします。

Designing Liberation Technologies

小さな複合的なプロジェクトチームを組織し、ケニアのNGOや会社と一緒になって、開発や民主化を促進する技術をデザインする。

Brands, Experience, and Social Technology

GSB(Stanford Graduate School of Business)との共同コース。Jennifer AakerのBuilding Innovative Brands (BIB) と Power of Social Technology (PoST) のコースの内容を利用し、企業は顧客や社員とのよりよい経験、会話、関係をいかにして育てるのか?ブランドを構築するためにソーシャルメディアをいかに利用すべきか?などといった疑問に対する解答を模索するクラスです。

Launch Pad: Design and Launch Your Product or Service

10週間で個人、あるいは、チームにて、デザイン思考を実世界の問題に当てはめて、プロトタイピング、テスト、価格設定、マーケティング、リリースまで行うクラス。

Innovations in Education: Designing the Teaching Experience

The School of Education, NewSchools Venture Fundとのコラボレーションによるコース。特に教師に焦点を当て、教育の改善を行うことを目的としています。

D-Lab: Design for Service Innovation

経済的に実現可能なサービスをに焦点を当てたプロジェクトベースのコース [2]。2011年の今季は、幼少期に重い病気を患った若年成人(18-25)向けのサービスをドメインとして設定しています。

[2] OIT344 dLab: Design for Service Innovation

Design for change: Poverty in America

NPO団体のGLIDEとともに、サンフランシスコのテンダーロイン区にいるその日暮しの人々の貧困のサイクルを断ち切るためのクラス。

Collaborating with the future: Launching large-scale sustainable transformations

デザイン思考の方法論、行動科学のテクニック、マーケティングや普及理論の要素を含む大規模変革のための道具、統合戦略のための方法論、これら4つの要素を組み合わせるプロセスが採用されたプロジェクトベースのクラス。

From Play to Innovation

遊び心を付与することで、イノベーションを高めることに焦点をおいたクラス。遊びの原理や要因に関する理解を得るために、遊びの状態や、創造的な思考に対して遊びがいかに重要かについて調査します。

プロジェクト

上記は半期にわたって開講されるクラスの説明でしたが、以下では、半期を越えて継続されているプロジェクトについて説明します。

K-12 Lab

K-12 Lab [3]は、途上国の子供や学校に対して、デザイン思考を提供するためのプロジェクトです。学生らが自分自身で学ぶ責任を持つデザイン思考の場へとクラスを変容させることができるようにするために、教員に対してワークショップを開催しています。

[3] K-12 Lab

実際のカリキュラムや様々なリソースは、K-12 Lab wiki [4]から確認できます。例えばカリキュラムリソースのページ [5]では、プロセス(Empathy->Define->Ideate->Prototype->Test)とLevel(1->2->3->4)ごとに何を教えるべきががまとめられています。例えば、EmathyのLevel.1は、”Open-ended Questions”です。このクラスでは、学生はより深い議論を導く質問形式であるOpen-ended Questionsを学びます。例えば、この活動の何が好きですか?、どのように感じましたか?、何かを変えれるとしたら何を変えたいですか?、などの質問は、Open-ended Questionsに該当します。カリキュラムには、ゴール、クラスの長さ、グループの規模、Open-ended Questionsとは何か、なぜOpen-ended Questionsを教えるのか、どのようにして教えるのか、さらに、サンプルレッスンのフローがまとめられています。

[4] K-12 Lab wiki
[5] Curriculum Home Page

Social Entrepreneurship Lab

Social Entrepreneurship Lab [6]は、コースから生まれたプロジェクトを継続し、世界中でそのソリューションを利用できるよう、外部組織との協力、あるいは、会社の設立を支援するプロジェクトです。以下では2つの事例を紹介しましょう。

[6] Social Entrepreneurship Lab

Angaza Design

 

Angazaの注目した問題点は、クリーンかつ持続可能なエネルギーです。世界中には150億人以上の人々が、電気にアクセスできません。このプロジェクトでは、そのうちの10%が存在する東アフリカをターゲットとしています。ここに住む人々は、収入の30%をケロシンなどの低クオリティで危険な燃料ベースの光源に費やしてます。

このような問題に対するAngazaのソリューションは、東アフリカ向けのマイクロソーラーホームシステムです。本プロジェクトでは、低コスト、かつ、典型的な家庭で必要な電力を供給可能なソーラーホームシステムを市場に投入予定です。システムは、ソーラーパネル、LEDライト、携帯電話やラジオの充電や電源供給が可能な回路ボックスを含んでいます。

The Pepper Eater Project

The Pepper Eater Projectの注目した問題は、乾燥チリペッパーを手動で製造する女性起業家に対する、より効率的で安全なツールの提供です。エチオピアだけで466,000,000キログラムのペッパーが年間消費され、400,000人の女性がペッパーの製造に関わっています。しかしながら、現在の手法では、手が油まみれになり、目、鼻、喉が空気中のペッパーの粉で焼けてしまうという問題があります。

このような問題に対するThe Pepper Eater Projectのソリューションは、現在の手法よりも2-4倍速く乾燥ペパーを粉々にする挽き機です。ペッパーの粉やオイルに接触する時間を制限することで、長時間の製造を可能とします。材料は安価なローカルマテリアルを採用し、実際に導入した土地で製造しています。

HPI School of Design Thinking

さて、Hasso Plattnerは地元ドイツ、ベルリンの郊外ポツダムにHPI School of Deign Thinking [7] を2007年に設立しました。以下では、こちらのd.schoolをPotsdam d.school と呼び、区別をしたいと思います。

[7] HPI School of Deign Thinking

システム

実際に私はPotsdam d.schoolを訪問し、Dr. Claudia Nicolaiから話しを伺う機会を得ましたので、その時のメモを元に説明をしたいと思います。

校舎はポツダム大学に隣接していますが、Potsdam d.schoolはポツダム大学とは独立しており、学生はポツダム大学の学生に限定されず、世界中から入学しているそうです。したがって、授業はドイツ語ではなく、英語で行わまれます。d.schoolとしての教育だけではなく、Stanford d.schoolとの共同研究も行っており、Hasso Plattner財団を通じた潤沢な研究資金に対して、リサーチャーはグラントの申請を行い、プロジェクトを行っている他、企業との共同研究を行っています。

実際の教育については、半期制を採用しており、2月から7月まで夏学期が開講され、10月から2月までの冬学期が開講されています。ベーシッククラスは夏学期から開講され、2日間のキャンプののち、デザイン思考の基礎を学ぶ短期のクラスを経て、6週間のプロジェクトが実施されます。6週間のプロジェクトは、外部のNPOないし企業との共同プロジェクト形式が採用されています。

冬学期のアドバンストクラスは、オプションのクラスであり、12週間の外部パートナーとの共同プロジェクトとなっています。学生は1つの実世界における問題に取り組み、イノベーティブなソリューションを創造し、パートナー企業において実装する方法を模索します。

どちらのd.schoolもデザイン思考、プロジェクトという点では一致しています。しかしながら、Potsdam d.schoolのクラスは、原則外部パートナーが存在しています。この点では、Stanford d.schooolと比較して、より社会に密接に関わっているとの印象を受けます。一方で、スポンサードのクラスしか存在しないという意味では、スポンサーの存在がデザイン上の制約になるとの可能性は否定できず、スポンサーを啓蒙するような提案を学生や教員が出来ているか否かという点に興味を覚えます。

まとめ

今回は、ソーシャルイノベーションの担い手としての大学・研究機関からd.schoolを選択肢、その特徴、クラス、プロジェクトについて説明を行いました。クラスの内容については、D-Labが適正技術に焦点を当てているのに対して、d.schoolは、デザイン思考を中心に構成されていました。また、立地的な性格から、コンピュータ技術、ビジネスに関連した要素がクラスに散りばめられていました。MIT D-Labとd.schoolは一見ソーシャルイノベーションとう視点で類似性が高く見えますが、実際には着眼点が全く異なることがわかります。

次回は、ヨーロッパに舞台を移し、TU Delftを紹介いたします。

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ソーシャルイノベーションの事例 - D-Lab

前回はソーシャルエンタープライズの事例として、大学発NPOのOLPCを紹介いたしました。OLPCは、寄付によって運営され、プロダクトであるXOシリーズを開発し、途上国の子供たちにラップトップを提供し、教育の機会を提供することで、途上国に活力を与えることをミッションとしていました。

今回からソーシャルイノベーションの担い手をソーシャルエンタープライズから移し、4回に渡って様々な大学や研究機関を紹介していきたいと思います。今回紹介するのはマサチューセッツ工科大学のD-Lab[1]です。

[1] D-Lab

D-Labは、D-Labの”D”は”Development though Dialog, Design, and Dissemination (対話を通じた開発、デザイン、普及”を意味しており、国際開発の枠組みの中で、適正技術と持続可能性のあるソリューションによる開発を育成するためのプログラムです。D-Labは、低コストの技術を用いた創造と実装を通じて、低所得の家庭の生活の質を向上させることをミッションとしています。

D-Labは、2002年にMIT教授であり、適正技術に関する発明家であるAmy Smithによって設立されました。受講資格については、MITの学生、もしくは、ハーバード大学、ないし、Cross-registrationに関する合意書を持つその他の機関に属する学生である必要があります。現在は、12の異なるコースが存在しています。以下では、12のコースの概要と代表的なプロジェクトを紹介していきたいと思います。

まずは、これまでに多くのプロジェクトとプロダクトを輩出した8つのコースについて説明しましょう。

D-Lab: Health

D-Lab Health[2]は、ゲスト講義とフィールドワークに基づくプロジェクトを通じて、
世界規模の健康技術のデザインに関する複合的なアプローチを提供するコースです。そのために、世界の健康に関する現在の課題を調査し、問題に対して対処するための医療技術をいかにデザインするかについて学習していきます。学生は、デバイス開発のためのフィールドでの経験を積むために、医療技術デザインキットを利用しながら、春休暇にニカラグラに行き、医療問題のスペシャリストともに仕事をしています。

[2] Course sie

Ambuzap

ニカラグアにて導入された、救急車から電源を供給し、持ち運び可能な低価格な除細動器。

D-Lab: Design

D-Lab: Design [3] は、途上国においてデザインをする際に直面する、デザイン上の制約に格別な注意を向けながら、デザイン、実験、プロトタイピングのプロセスを通じて、恵まれない地域が直面している問題に対処するためのコースです。コース内では、分野横断的なチームを組織します。このチームは、学期を通じて、地域パートーナー、現場での実践者、当該分野のエキスパートなどとのコミュニケーションを通じて進められます。トピックは、入手可能性、製造に対するデザイン、持続可能性、地域パートナーや消費者に対する効果的な戦略も含みます。

[3] Course site

Bamboo Pencil Maker

インドのニューデリーにて導入。
使いやすく、安くて、収入を生むツールを開発するという目的のもと、竹から鉛筆を製造するデバイスを開発。

D-Lab: Development

D-Lab: Development[4] は、途上国のためのささいなレベルでの技術的改善の問題に対処するためのコースです。特に、低価格、持続可能な技術を適用することで、低所得家庭における生活の質を改善することを目的としています。学生は、チームを組織し、途上国の地域団体と一緒にプロジェクトを実施します。これまでにガーナ、ブラジル、ホンジュラス、インドにて現地調査を行っています。プロジェクトチームでの打ち合わせは、特定のプロジェクトにおける開発に焦点をあて、地域言語の導入に加えて、訪問先の各国について、コミュニティの文化、社会、政治、環境、経済に関する概観を含んでいます。

[4] Course site

Bicilavadora

ペルーにて導入。
自転車ペダル式の洗濯機

D-Lab: Mobility

D-Lab: Mobility[5] は、適切なデバイスを構築するために、サウンドエンジニアリングを適用し、車椅子技術の改良に焦点を当てたコースです。講義は、車椅子の利用法、社会的なステイグマ、製造上の制限に焦点を当てながら、第3世界のパートナー、車椅子の組織、MIT教員によって行われます。複合的な学生チームは、ハードウェアデザイン、製造上の最適化、生体モデリング、ビジネスプラン開発に関連した、車椅子プロジェクトを半期に渡って行います。

[5] Course site

Leveraged Freedom Chair

LFCは、途上国向けに開発されたレバー式の車椅子。
歩きよりも早く、どんな地形での登ることができます。

Development Ventures

Development Ventures[6] は、途上国、振興成長市場、十分なサービスを受けていない消費者をターゲットとして、ベンチャー企業の設立、資金調達に関する実験的なアクションラボです。世界中を対象として、ポジティブな社会的変革を可能とする、あるいは、加速するための、改革的なイノベーションや実験的でスケーラブルなビジネスが特に強調されています。

[6] Course site

Volta Ventures

Volta Ventures(VV)は、サハラ以南のアフリカにおいてミドルクラス向けの住宅を提供する不動産開発会社です。VVは、従来型の住宅市場で利益を得ることで、低所得家族が購入可能な住宅へ再投資しています。

D-Lab: Prosthetics for the Developing World

Developing World Prosthetics [7] は、人間生体力学、身体障害、リハビリに関する適正技術についての問題に対処するためのコースです。トピックは、これらの障害を乗り越えるための途上国と先進国の技術と、四肢用装具に焦点に当てています。プロジェクトは、途上国向けの矯正器具と人口装具について、特にインド、ガテマラのパートナーとともに実施されています。

[7] Course site

Exo-knee Prosthesis

インドにて実施。

大腿義足技術は最も研究の進んだ人工装具ですが、実際の足のように見え、動作する人工膝関節は存在しません。Exo-kneeは、実際の足のように、たったまま固定でき、自由回転でき、外骨格式の安価な大腿義足です。

D-Lab: Energy

D-Lab: Energy[8]は、電気を生成するためにコンパクトで頑丈かつ低価格なシステムが要求される途上国において、代替エネルギー技術の理解と適用に学生を従事させるプロジェクトベースのアプローチを提供するコースです。プロジェクトでは、水力、太陽、風力発電装置に関する理論的な分析を含むほか、デザイン、プロトタイピング、評価、実装を行います。

[8] Course site

Orange Juice Bag Sealer

低電力消費で安全にプラスチックを密閉するメカニズムを採用し、女性がオレンジジュースを素早く密閉し、販売することができます。このビジネスを通じて、月に25ドルの収入を獲得できます。

D-Lab: Dissemination

D-Lab: Dissemination [9]は、途上国における、水の普及、公衆衛生、衛生状態(WASH)に関するイノベーションに注目したコースです。コースは、フィールドベースでの学習、ケーススタディ、講義、ビデオで構成されています。特に、WASHにおける原理原則、文化に即したソリューション、適正かつ持続性のある技術、行為の変化、ソーシャルマーケティング、パートナーシップの構築などが強調されています。

[9] Course site

Rubble Rousers

ハイチのパートナーと共同で進行中のプロジェクト。
ココナッツの皮で作られたローコストな蛇籠。
カゴは瓦礫に掃除に使われたり、建築物の構造や修理に使われています。

続いて、4つの新規コースについて説明いたします。

-Lab: Cycle Ventures

D-Lab: Cycle Venturesは、サービスが不十分な地域において、経済の機会を提供するという目的のもと、水汲み、製粉、運搬など多数の目的に人間の力を役立てるために、自転車の技術を利用するコースです。コースは、自転車技術の革新性に関する歴史的視座を提供し、技術的なメカニズムをレビューし、社会経済発展を育てるための革新的な道具としての自転車の普遍性に迫ります。

D-Lab: Discovery

世界の90%のエンジニアリングやデザインは世界の人口の裕福な10%の欲求に向けられています。残りの90%の人々は、大部分が未解決の基本的な問題の中で生活しています。これらの恵まれない地域の要求に対して創造性と創造力によって対応するために、このコースは潜在的な創造性を模索し、高めることを狙いとしています。

D-Lab:ICT

D-Lab ICTは、実務に関する知識と、途上国の技術改良に関する問題に対する広範な理解を提供しながら、恵まれない地域の新世代の実践者をトレーニングするコースです。電子部品は低価格であり、多くのフリーの開発環境があるため、デジタル技術は、プロトタイピングやイノベーションに対する導入点として障壁が低いとされています。また、デジタル技術は、地域に活力を与える手段となる高い可能性を秘めています。このゴールを達成するためには、開発に関する広い理解と横断的なアプローチが要求されます。

D-Lab: Schools

D-Lab: Schools は、より安くより良い学校をデザインし、途上国の教育不足によって起きる問題に対処するためのコースです。基本となる学校設立技術は、レクチャー、ラボ実験によってカバーされます。学生はチームを組織し、途上国のNPOとともに学校をデザインする術を身につけることができます。

まとめ

今回は、ソーシャルイノベーションの担い手としての大学・研究機関からMIT D-Labを選択し、12のコースの内容とそれぞれのコースの代表的なプロジェクト例について紹介いたしました。2002年の設立以降、数多くのプロジェクトが生まれ、MIT 150周年記念の際には、”D-Lab150プロジェクト”という企画も実施されました[10]。途上国というフィールドに対して適正技術と持続可能なソリューションに焦点を当て、現地の様々な問題をテクノロジーとデザインによって解決していく様は、まさにMITの真骨頂と言えるでしょう。

[10] 150 D-Lab Projects to celebrate MIT’s 150th Anniversary

しかしながら、ソーシャルビジネスとして考えた場合、その圧倒的なテクノロジー、あるいは、デザインエンジニアリングに対して、ビジネス面でのイノベーションの影が薄いとの印象を受けます。確かにDevelopment Venturesのクラスは存在し、いくつかのプロジェクトをもとにソーシャルエンタープライズの起業に至っています。しかしながら、テクノロジーが主体となったビジネスであり、ビジネスとしてのスケーラビリティが考慮された事例が少ないとの印象を受けます。次回は、この点について意識しながらStanford d.schoolを紹介したいと思います。

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ソーシャルイノベーションの事例 - OLPC

前回はソーシャルエンタープライズの事例として、米国NPOのKopernikを紹介いたしました。Kopernikは、利益追求を目的としないNPO法人であり、一般市民(個人)、市民団体、会社/大学をオンラインで媒介する場、すなわち、オンラインマーケットプレイスとして機能し、マッチングのための場の提供するというビジネスモデルを選択していました。

今回取り合げるのはOLPC – One Laptop Per Child – [1]です。前回と同様に、NPOを取り上げるわけですが、Kopernikが元コンサルタントを中心に設立されたのに対して、OLPCはマサチューセッツ工科大学のNicholas Negroponte(ニコラス・ネグロポンテ)を中心に、大学発NPOとして、2005年1月に、AMD、eBay、Google、News Corporation、Red Hat、Marvellらの寄付により設立されました。

[1] OLPC
 

MITメディアラボの創設者として知られるネグロポンテは、1993から1998年に渡って『Wired Magazineにて、”Move bits, not atoms(アトムからビットへ)”と呼ばれるコラムを毎月連載していました。Tangible Media Groupの石井裕教授の有名な”Tangible Bits”の論文[2]が世に出てのが1997年。ネグロポンテが石井教授に、「過去の研究を捨て、新しい研究に挑戦しろ」と[3]と言ったのは有名な話ですが、ネグロポンテの思想は、少なからず影響を与えたと考えられます。実際に、2000年に発売された著書『タンジブル・ビット – 情報の感触・情報の気配』に、ネグロポンテ自身が「タンジブル・メディア -アトムを着るビット」という原稿を寄稿しています。

[2] Tangible Bits: Towards Seamless Interfaces between People, Bits, and Atoms
[3] 「君が取り組んできた研究の面白さはわかった。でも、MITでは同じ研究は絶対に続けるな。まったく新しいことを始めろ。人生は短い。新しいことへの挑戦は最高のぜいたくだ」

OLPCのミッションは、「ネットワークにつながったラップトップを全ての就学児に提供し、教育を通じて世界の貧しい子供たちに活力を与えること」と定められています。このミッションのために、OLPCは、耐久性のある、低価格・低電力の、ネットワークに接続されたラップトップの開発を行っています。この目的のために、協働的で、楽しく、自分ひとりで打ち込めるような学習のためのハードウェア、コンテンツ、そしてソフトウェアをデザインしています。このようなツールに子供がアクセス可能となることで、子供たちは教育に集中でき、他の子供らと、学習、共有、創造することができると彼らは考えています。また、彼らは、”It’s not a laptop project. It’s an education project.”と掲げるように、ラップトップ開発のプロジェクトではなく、教育プロジェクトであることを強調しています。

思想的背景

彼らの思想的背景は、1967年のSeymour Papert(シーモア・パパート)による”Logo”まで遡るとされています。LogoはLispを原型としたプログラミング言語で、子供の思考能力の訓練を目的としていました。Logoは、Turtle graphics(タートル・グラフィックス)と呼ばれる、デカルト座標系内の相対的なカーソル(タートル)を用いてべクターグラフィクスによる描画を実行可能なソフトウェアに採用されたことで有名です。Web上で再現されたTurtle graphics[4]のExmapleページから実際の動作を確認することができます。

[4] Web Turtle

少し話が脱線しますが、Papertは、発達心理学者Piaget(ピアジェ)の構成主義(Constructivism)の影響を強く受けています。Piagetの構成主義は,個人が「”同化”と”調整”のプロセスを経て、自らの経験から新たな知識を能動的に構成する」という理論です。”同化”とはすでに持っている認識的枠組み(シェマ)に合うように、入力された情報を変形させること、”調整”とは、認識的枠組みを新しい経験に適応させていくこと、を指します。なお、構成主義の限界については、子ども自らが間違いを訂正しながら学習する必要があるため、その子ども自身の知的な枠を越えることができないという指摘がなされています。このような構成主義に対して、「子供が大人を含む社会の手助けを借りて高次学習を獲得する」という考え方を示したのがをソヴィエトの発達心理学者Vygotsky(ヴィゴツキー)でした。

さて、Papertはこのような構成主義の考え方を踏まえ,構築主義(Constructionism)という考え方を展開しました。構築主義とは、「意味のあるものを構築することが最も高い学習効果を持つ」という理論です。このような理論に基づく学習支援システムは、構築主義システムと呼ばれ、(後のMindstormとなる)Logo言語を利用したProgrammable Bricks[5]やResnickらによるCricket[6][7]が当該システムに分類されます。

[5] Programmable Bricks
[6] Crickets(MIT)
[7] PicoCricet

話をOLPCの思想的背景に戻しましょう。Papert以外の影響として、Alan Kay(アラン・ケイ)による、持ち運び可能なパーソナルコンピュータとしてのダイナブック構想があります。また、パーソナルコンピューティングの未来像を描いたNegroponte自身による著書『Being Digital(邦題: ビーイング・デジタル – ビットの時代)』も、OPLCの設立にあたっての土台となっています。

プロダクト

さて、ネグロポンテが、2005年のダボス会議にて100ドルラップトップ構想を発表したのち、2006年には、XO-1が発表されました。XO-1の開発にあたり設定されたOLPC CTOのMary Lou Jepsenによるデザイン要件[8]を以下に示します。

[8] A Conversation with Mary Lou Jepsen

– 最小限の消費電力。総消費電力目標が2-3ワット。
– 最小限の製造コスト。100万台で製造する場合、1台あたり100ドルを目標とする。
– クールな外見、物理的な外見についても確信的なスタイリングであること
– 非常に省電力なeブックリーダ
– オープンソースとフリーソフト

実際のスペックはOLPCの該当ページ9]を参照していただくとして、いくつか特徴的な機能について説明していきましょう。

[9] XO-1.5 Technical Specs

サイズ

XO-1は、テキストブックサイズで、ランチボックスよりも軽い重量です。変形可能なヒンジのおかげで、通常のラップトップ、eブックリーダ、ゲームマシン、などの設定に変更して利用することができます。

外装

外装のエッジは丸みを帯びていて、内蔵ハンドルは、子供サイズです。キーボードは、ゴム性カバーで覆われています。デュアル対応のタッチパッドは、ドローイング、ライティング、ポインティングをサポートしています。

耐久性

ラップトップで最も壊れやすいのは、ハードディスクであり、XOはハードディスクを使っていません。また、頑丈さのために、2mm厚のプラスチックを外装に用いています。ワイヤレスアンテナは、典型的なラップトップよりも優れており、USBポートのカバーにもなります。ディスプレイも同様に、内部バンパによって保護されています。

寿命

耐久寿命は、5年を想定しています。この持続性を担保するために、子供によるフィールドテストだけではなく、工場で破壊テストを行っています。

世界への広がり

さて、XO-1は現在、31ヶ国、200万人以上の子供たちによって、利用されています。地図に詳細データがマッピングされたページ[10]で、プロジェクトの一覧を確認することができます。

[10] OLPC Deployments as of March 2011

Give One Get One

 

ビジネスモデルとして興味深いだけではなく、このXO-1の拡大に貢献したと考えられるキャンペーンが、2007年、2008年に実施された”Give One Get One (G1G1) “です。このキャンペーンは、先進国のユーザが1人2台400ドルで購入することで、1台を購入者が利用し、1台を途上国に送ることができるというものでした。2008年11月から12月まで、カナダ、アメリカを対象として実施され、2008年11月から12月には、EU、スイス、ロシア、トルコまで拡大されて実施されました。

XO-3

XO-1の次期モデルとされるXO-3は、2012年に発売予定とされています。主なデザインの特徴を以下に列挙します。

– 半フレキシブルでありながら極めて頑丈で、透明モードと反射モードとして利用できるプラスチック式のタブレットスクリーン
– e-bookリーダから写真ビューワまで対応
– 複数の子供が、同時に遊んだり、学習することを実現するマルチタッチ
– フルタッチキーボード
– 背面カメラ

まとめ

今回は、途上国の子供たちに学習のためのラップトップを提供することにより、教育の機会を提供するOLPCを取り上げました。OLPCはNPO団体であり、寄付により活動が運営されています。2008年の経済危機の影響により、年間予算は1200万ドルから500万ドルへ減額となり、2009年1月には人員削減が行われました[11]。寄付金をベースとしてプロダクトを製造・販売するプロダクトアウト型のビジネスモデルは、寄付金を捻出する企業の景気動向に左右される側面も多く、不景気期には厳しい状況に陥る可能性が高いと考えられます。

[11] January 2009 restructuring

次回からは、大学、ならびに、研究機関のソーシャルイノベーションに関連するプロジェクトにスポットを当てていきたいと思います。

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ソーシャルイノベーションの事例 - Kopernik

前回は、ソーシャルエンタープライズの事例として、KickStartを紹介いたしました。KickStartは、地元の人々が起業家としてスモールビジネスを興すことによって、持続可能な社会の形成、雇用の創出、経済の発展に貢献するためのツールを開発し、そのツールを販売することで、利益を獲得するビジネスモデルを採用していました。

今回紹介するソーシャルビジネスの主体は、米国NPOのKopernik(コペルニク)[1][2]です。Kopernikの登記地は米国ですが、共同創設者兼CEOが日本人であることから、日本との関係が深く、日本支部も存在いたします。また、東日本大震災でもソーラーランタン、ソーラー・イヤー(補聴器)を被災地に届けるプロジェクトが実施されました。

[1] コペルニク(日本版)
[2] Kopernik(Global)

Kopernikは、”テクノロジーマーケットプレイス”としての自らの位置づけによって特徴づけられています。まずこの事業コンセプトに関する説明を上記ホームページから抜粋しつつ説明いたします。

コペルニクは、オンライン・マーケットプレースを通じてテクノロジーを所有する会社や大学、途上国の市民団体、そして一般市民の3者をつなげ、革新的な技術・製品を、発展途上国に波及させます。
コペルニクは、ウェブ上に革新的な製品・技術を掲載し、それを見た途上国の市民団体が立案したその技術・製品を活用するプロジェクトの提案書をウェブ上に掲載します。そして、プロジェクトを見た一般市民は、少額の寄付をし、プロジェクトを実現させます。

つまり、Kopernikは、前回紹介したKickStartとは異なり、一般市民(個人)、市民団体、会社/大学を、オンラインで媒介する場として機能することを事業とし、直接的な製品の開発、製造、販売による利益獲得という一般的なビジネスモデルを採用していません。NPO法人=利益追求を目的としない法人として選択した事業内容、というと決してそうではなく、積極的な理由が存在します。それについて同サイトから該当箇所を再び引用してみましょう。

貧困問題は現在地球上で最も深刻な問題の一つです。しかし、その問題を解決するのに、革新的なアイデアや手法が取り入れられることは非常に稀です。昔からの使いまわしの「解決策」ではほとんど効果が出ません。
一方で、発展途上国向けに開発された革新的技術は巷に溢れ、数、種類ともに増加しています。しかし、途上国側からしてみれば、このような技術が存在することすら知りません。技術保有者側からしてみれば、途上国のマーケットへのアクセスが非常に限られている上に、いくら安くとも、技術の価格が貧困層の手の出る範囲にまでは下がらず、結果的に行き詰ってしまうというのが現状です。
これらの問題を、我々なりに解決しようとコペルニクを立ち上げました。

現在の途上国支援という場を考えた場合、すでに技術は存在するものの、それらの技術を適切にマッチングする仕組みがなかったことが指摘されています。最も重要な点は、過去において、技術的課題やリソースの問題から実現できなかったマッチングの場を構築した点にあります。ネットワーク技術の工場、ファブリケーション技術の発展を背景に、最も適切なタイミングで先行者としての地位を築きつつあるとの印象を受けます。それでは実際のビジネスモデルについて、引き続き紹介していきましょう。

ビジネスモデル

Kopernikのビジネスモデルでは、4つの主体が登場します。

1. サポーター
技術を導入するための資金を提供する個人および企業

2. テクノロジー要求者
地域組織に代表される途上国において技術を求めている団体

3. テクノロジー提供者
途上国の問題に対する革新的なソリューションを開発した企業

4. Kopernik
途上国のためにデザインされた技術のためのマーケットプレイスを提供

さて、このような4つの主体で構成されるマーケットプレイスでは、特定の地域団体によって、様々な場所で様々な問題を解決するために立案されるプロジェクトが存在しています。個別のプロジェクトや、そこで導入されるプロダクトを紹介する前に、Kopernikの採用している具体的な問題解決のためのステップを紹介します。

問題解決のためのステップ

ステップ1: プロジェクトに寄付をする
発展途上国の市民団体などテクノロジーを必要とする団体から提案されたプロジェクトを見て、支援したいものを選ぶ。

ステップ2: 製品を買う
プロジェクトを実行するのに必要なお金が集まったら、テクノロジーを保有する会社・大学から製品を買う。

ステップ3: 製品を発送する
テクノロジーを保有する会社・大学が製品を発送する。

ステップ4: 進捗を報告する
プロジェクトを実施する団体が、製品がどのように使われたかをコペルニクのウェブを通じて報告する。

プロダクト

Kopernikのウェブサイトには、多くのプロダクトが掲載されています。ここでは代表的なプロダクトを3点紹介いたします。なお、説明文は全て英語サイトからの拙訳です。

自分で度を調節できるメガネ

訓練を受けた眼医者の数が少なく、人々に正しい度数のメガネを処方出来ないということが、発展途上国での大きな問題の1つです。AdSpecs[3][4]は、メガネを必要とする人が自分で度数を調整出来るメガネです。

レンズの度数を変化させるために、メガネのフレームに付いている注射器部分の車輪を回して、レンズの中に注入するシリコンの量を調整します。度数を調整し終わったら、フレームの両側のネジを締め、注射器とチューブを取り外すだけで、数分後には通常のメガネとして利用できます。

製造:Centre for Vision in the Developing World
価格:$21.00

[3] 自分で度を調節できるメガネ
[4] AdSpecs – Self-Adjustable Lenses

Qドラム:円形水運搬器具

Qドラム[5][6]は、50リットルの水を運搬可能な頑丈なドーナツ型のコンテナです。

Qドラムのもともとのアイディアは、水源から水を運ぶ際に十分な量を一度に運ぶことができない途上国の農村部に住む人々の要望から生まれました。この重労働は、一般的にそれぞれのコミュニティの子供や女性に課せられます。例えばアフリカでは、背中や首の怪我の原因は、彼女たちが頭を使って重い荷物を運搬する方法にあると言われています。円形の容器に水を入れて運ぶことで、この問題を解決することができます。

製造:Q Drum (Pty) Ltd
価格:$65.00

[5] Qドラム
[6] Q-Drum

ライフストロー

ライフストロー[7]は、下痢防止のための持ち運び可能な浄水フィルタです。簡単に持ち運びができて、安全できれいな飲料水を手に入れることができます。個人用で、低コストの浄水ツールですが、700リットル、つまり、一人が1年間利用する量の水を浄水可能です。世界の貧しい人々の半分が、水を起因とする病気に悩まされ、6000人、特に子供が、安全でない飲料水から来る病気で日々命を失っています。ライフストローは、2015年までに安全な水にアクセスできない人々を半減させるというミレニアム開発目標を達成するだけではなく、病気を防ぎ、命を救う実用的な手段として開発されました。

製造:Frandsen
価格:$7.50

[7] LifeStraw Portable Water Filter

プロジェクト

最後に、上記で紹介した3点のプロダクトに関するプロジェクトを紹介したいと思います。

視力を取り戻す

インドネシアのマナド県にある貧しいコミュニティーにて、自分で自由に度数を調節できるメガネが配布された事例です。

Kopernik distributes self-adjustable lenses from Ewa Wojkowska on Vimeo.

水運びの負荷を軽減

ケニアに住む女性や子供たちが、水源から彼らの家まで水を運ぶ負荷を軽減できるようにするためのプロジェクトです。目標金額は、$8,812で、現在(2011年5月n日)$1,805が寄付によって集まっています。

解決すべき問題:ケニヤの女性や子供は、家事で使用する水を運ぶ責任があります。彼らは頭に大量の水の入った容器を載せて、長い距離を運ぶため、脊髄や首の怪我に悩まされています。さらに、子供が彼らの責任を果たすため、授業に遅刻したり、出席できないなど、その国の教育レベルにまで影響を及ぼしています。

実施場所:ケニヤ
プロジェクトURL:こちらをクリック

きれいな水へのアクセスを容易に

東ティモールのオクシ(インドネシア領の西ティモールにぽつんとある東ティモールの飛び地)のコミュニティに住む女性や少女たちが、きれいな水に容易にアクセスできるようにするための、現在進行中のプロジェクトです。

解決すべき問題:東ティモールでは、人口の半分が飲料用水にアクセスできません。乾燥期にはこの問題は更に悪化します。

実施場所:オクシ、東ティモール
プロジェクトURL:こちらをクリック

まとめ

今回は、前回紹介したKickStartとは異なるビジネスモデルを採用したソーシャルエンタープライズとして、米国NPO法人Kopernikを紹介いたしました。Kopernikは、利益追求を目的としないNPO法人として、マッチングのための場の提供というビジネスモデルを選択しています。このように、直接製品を開発、製造、販売するという一般的な手法とは異なる手法と採用したBOPビジネスに対する関わり方も今後は増加すると考えられます。

21世紀に入り、社会貢献に関する考え方も変化しつつあります。今や、ビジネスにおける成功者やキリスト教的寄付文化に影響された人々だけではなく、ネットワークを通じて世界のリアルな問題を生々しく把握した”普通”の人々が新たにプレイヤーとして参加しつつあります。彼らは、単なる利益追求型の行動原理ではなく、内的報酬型の行動原理に基づいて、日中は勤務先での仕事に従事しつつ、空き時間や休日を使い、刺激的な社会貢献活動を行っています。社会変革の一旦を担うことで精神的に充足されることを報酬として考える人々は増加傾向にあっても、それをビジネスとして落としこむまでには多大なる労力を必要とします。ここに新たなビジネスチャンスがあるのかもしれません。

次回は、ソーシャルエンタープライズと研究機関のブリッジとしてのOLPCプロジェクトについて紹介いたします。

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