デザインメソッド – モデリング

前回よりデザインプロセスにおいて用いられてきた、既存のデザインメソッドについて紹介をしています。前回は「1. フィールドへ赴き、データを取得する」ためのメソッドとして、まず、量的データではなく、質的データに注目し、質的調査法として、口頭データと視覚データの様々な採取方法について説明をしました。その上で、目的に応じた複数の手法の組み合わせの事例として、エスノグラフィック・インタビューの一形態である、コンテクスチュアル・インクワイアリについて説明をし、その限界について言及いたしました。

第2弾となる今回は、2番目のプロセスである「2. 課題を発見し、仮説を構築する」ためのメソッドを紹介していきましょう。このプロセスでは、最初のプロセスである、「1. フィールドへ赴き、データを取得」するプロセスにて取得した”質的データ”を用いて、仮説を構築していきます。

このプロセスでは、フィールドにおける現象を理解するために、事象同士の関係形式としての「構造」を構成します。構造それ自体を表現したものを「モデル」と呼ぶことから、構造化の過程を「モデリング」と呼びます。モデルは、構造を視覚化することで、より深い理解をもたらし、議論の土台となるため、非常に有用なツールといえます。実際には、モデリングを通じて構築された複数のモデルをもとに仮説を構築することになります。以下では、様々なモデルを構築するメソッドを紹介していきましょう。

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デザインメソッド – デザインリサーチ

前回は、デザイン思考の系譜として、David Kelly、Tim Brown、奥出直人、Hasso Plattnerという4人の研究者の提唱する定義とデザインプロセスについて説明いたしました。また、これらのデザインプロセスの共通点として、以下の5つを挙げました。

1. フィールドへ赴き、データを取得する。
2. 課題を発見し、仮説を構築する。
3. プロトタイピングを行う。
4. フィールドへ赴き、テストを行う。
5. 製品を実装する。

さて、今回から4回に渡って、既存のデザインメソッドについて紹介をしていきます。上記のデザインプロセスは、デザイン思考の単なるプロセスに過ぎず、実際にデザインするためには、デザインメソッドを用いて質を担保する、さらには、効率化を実現することがもとめられます。第1回目は、最初のプロセスである、「1. フィールドへ赴き、データを取得する」のためのメソッドを紹介していきましょう。

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デザイン思考の系譜

前回は、ソーシャルイノベーションの担い手としての大学・研究機関の第4弾として、FabLabを選択し、その思想的特徴、中心となっているクラス”How To Make (Almost) Anything”、利用可能なツールについて説明を行いました。特にツールについては、MIT FabLabで利用可能なツールに加えて、100ドル程度のコストで構築可能なツールについても紹介いたしました。

第04回から第10回までの7回に渡って、企業、NPO、大学、研究機関のソーシャルイノベーションの事例について検討してきましたが、今回からは再びデザイン思考の話へトピックを戻します。まずは、デザイン思考の系譜について、4人の研究者の提唱する定義とデザインプロセスについて説明しましょう。イントロダクション(第01回)で説明した内容と一部、重複する箇所もありますが、今回はより詳細な説明をしています。

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ソーシャルイノベーションの事例 – FabLab

前回は、ソーシャルイノベーションの担い手としての大学・研究機関の第3弾として、TU Delft Industrial Design Engineering(IDE)を選択し、その特徴、プロジェクトについて説明を行いました。IDEの場合、MIT D-Labや、Stanford d.schoolと異なり、明確なコンセプトは打ち出されていませんが、学位を取得可能な学部、修士課程、博士課程にてソーシャルイノベーションに関する研究を行うことができること、また、Philipsをはじめとする企業等の外部団体とのコラボレーションが盛んであることから、プロダクトとして社会に対する実質的な貢献が可能であることが特徴といえるでしょう。

今回は、ソーシャルイノベーションの担い手としての大学および研究機関の第4弾として、FabLab[1]を紹介したいと思います。これまで紹介してきた3つの組織は、研究者や企業がモノを開発し、製造し、普及させる、あるいは、そのモノを使ってビジネスを起こす、という視点に基づいていました。一方で、FabLabは、必要なものをみんなで作る”DIWO(Do It With Others)”を基本理念に置いています。FabLabはMITからスタートしましたが、すでに世界中に展開されており、ここ日本においても、2010年春にFablab Japan[2]が設立されて以来、注目を浴びつつあるだけではなく、2011年5月には鎌倉に日本初のFabLab[3]がオープンいたしました。

[1] FabLab Main
[2] FabLab Japan
[3] FabLab Kamakura

まず、FabLab Japanのウェブサイトよりファブラボとは何かについての具体的な説明を引用をしてみましょう。

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ソーシャルイノベーションの事例 - TU Delft IDE

前回は、ソーシャルイノベーションの担い手としての大学・研究機関から第2弾として、d.schoolことHasso Plattner Institute of Design at Stanfordを選択し、その特徴、クラス、プロジェクトについて説明を行いました。d.schoolの最大の特徴は、デザイン思考であり、さらに、コンピュータ技術、ビジネスに関連した要素がクラスに散りばめられていました。

今回は、ソーシャルイノベーションの担い手としての大学および研究機関の第3弾として、舞台をヨーロッパへと移し、TU DelftことDelft University of Technology[1]を紹介いたします。

[1] TU Delft

Stanford d.schoolや、MIT D-Labと同様に、TU Delftもまた、全ての学部でソーシャルイノベーションに取り組んでいるわけではありません。Industrial Design Engineering (IDE)プログラム[2]が中心となってこの領域に対する研究を行っています。IDEは、1965年に設立された、学部および修士・博士向けのプログラムで、”人々が使いたくなものを作る”をモットーに、病院のベッドからドライヤーまで、携帯電話からウェブサイト、企業CIまでをデザインしています。

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