まとめと今後の展開

前回は、ソーシャルイノベーションのための構造構成主義的プロダクトデザイン手法の実践の最終回として、Wanic ToolkitとWanicシリーズを用いたビジネスモデルについて説明しました。ビジネスモデルについて説明するにあたって、まず、Wanicシリーズの製品ラインナップ、途上国・先進国を含む事業戦略を説明したのち、初期の事業展開先である東ティモールにおけるWanicシリーズのポジショニング、技術伝達を中心とした事業展開、ならびに、ビジネスモデルの考察について説明しました。

今回は、第25回目の記事、つまり、本ブログの最終回となりました。そこで、前半では、各章のまとめを行い、後半では、構造構成主義的プロダクトデザイン手法、Wanic/Wanic Toolkitの今後の展開について述べたいと思います。

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構造構成主義的質的研究法(SCQRM)

前回は、既存のデザイン手法をBOPというフィールドに適用する場合の限界について述べ、その限界を打破するためのアプローチを構築するための足がかりとして、「現象学」と「構造主義科学論」の流れを組む超メタ理論であり、現象と関心に注目することで、人間科学において起きがちな信念体系同士の対立を克服し、建設的なコラボレーションを促進するための方法論である、構造構成主義の全体像について説明しました。構造構成主義的アプローチを導入することで、BOPというフィールドの持つ”特殊性”を構造的に理解し、提供者(デザイナ)と被提供者(ユーザとしての現地人)の信念対立を解消することが可能となります。しかしながら、このような構造構成主義それ自体は概念であり、思想であるため、デザイン手法として直接応用することは困難です。

今回は、構造構成主義を背景として持つ研究法のひとつとして臨床心理学などの分野で用いられている、”構造構成主義的質的研究法(SCQRM)”を紹介いたします。SCQRMは構造構成主義を超メタ理論(超認識論)とするメタ研究法で、関心相関性を中核原理とし、メタ方法論として、以下の11の関心相関的アプローチを備えています。

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既存のデザイン手法の限界と構造構成主義

前回は、デザインプロセスにおいて用いられてきた既存のデザインメソッドの紹介の第3弾として、「3. プロトタイピングを行う」プロセスにおいて利用可能なデザインメソッドであるデザインパタンを取り上げ、その起源、および、建築からソフトウェアエンジニアリング、HCIまでの変遷を追ってきました。特にHCIのデザインパタンについては、年代別に導入・発展・拡散の3つのフェーズに区分し、それぞれの特徴について説明をいたしました。また、現状のパタンの問題点として、決定論的パタンとしての限界、パタン同士を組み合わせて全体性を構築する際のデザイナ関与部分に関する問題について指摘いたしました。

今回は、既存のデザイン手法の限界、特にBOPというフィールドに既存のデザイン手法を適用する際の限界について、”構造”をキーワードとして論じたいと思います。その上で、打開策としての構造構成主義について説明をいたします。

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