ソーシャルイノベーションの事例 - KickStart

前回はソーシャルイノベーションの場としてのBOPに注目し、語義的な起源、定義、その特徴について述べてきました。本blogのテーマである、ソーシャルイノベーションのためのデザイン思考、および、デザイン手法について説明する前に、これから7回に渡って、ソーシャルイノベーションの担い手としての、企業、NPO、大学、研究機関を紹介し、具体的なプロダクト、サービス、システムについて説明していきたいと思います。特に前半3回で紹介する3団体は、それぞれが異なるビジネスモデルを採用しており、ソーシャルエンタープライズとして成立しています。

今回紹介するのは、KickStart(キックスタート)[1]です。KickStartは1991年にMartin FisherとNick Moonによって設立されたApproTECを起源とし、2005年に名称を変更し、現在のKickStartとなりました。彼らは、KickStartのミッションを「数百万人の人々の貧困からの救出」と定めています。彼らは、ケニアやその他の国々における”持続可能な経済成長”と”雇用創出の促進”を目的として、小規模で利益を出せる企業を設立し、経営を行うことを目的とした起業家によって利用される技術に注目し、これを開発し、広めていくことで、この目的を達成しようとしています。

[1] KickStart

さて、彼らのビジネスモデルは、貧しい起業家が自分自身の手で利益を生み出すビジネスを作り出すために利用可能な、お金を生み出すシンプルなツールを開発し、販売し、普及させるための5つのステップを基本としています。この5ステップの原文と拙訳を以下に掲載いたします。

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キーワードとしてのBOP

前回は、イノベーションについて、その定義と派生系について述べてきました。今回は、ソーシャルイノベーションと密接に関わっているBOP – Bottom of the Pyramid – について説明をしたいと思います。最近では、BOPもバズワード化していますが、その起源と定義について改めて整理をしてみましょう。

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Innovation and Social Innovation

前回は、本blogのタイトルにも使用している2つのキーワード – デザイン思考とソーシャルイノベーション – に関して、それぞれの定義を中心に論じました。今回は、キーワードのうちの1つであるイノベーションについてもう少し掘り下げてみたいと思います。

イノベーションという単語は、企業広告、大学教育、研究、様々な場所で用いられ、それを目にする人も若干食傷気味かもしれません。何も考えずに単語だけ使用するとたまに恥ずかしい目に会うこともあるので、まずは整理しておく必要があります。今回は、イノベーションの起源から始まり、派生したいくつかのイノベーションの類型について述べていきたいと思います。具体的には、シュンペーターによるイノベーション、破壊的イノベーションと持続的イノベーション、オープンイノベーション、ソーシャルイノベーションです。これらのそれぞれについて、起源と定義をまとめてみましょう。

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イントロダクション – No Tinkering, No Innovation

はじめに

このblogは、これまでの私の活動[1]に基づいて、ソーシャルイノベーションのためのデザイン理論および実践についてわかりやすく解説をしたいと思い立ち上げたものです。一部の内容についてはすでに雑誌や論文で掲載しているものですが,字数,図表などの資料の制限もないblogというメディアを最大限に活用し、全25回の連載を通じてデザイン理論と実践についてひと通り説明を行う予定です。原則として更新は週1回のペースを保ちつつ、半年で終了させたいと考えています。気ままにプロダクトやイベントなどの告知もするかもしれません。全25回のタイトルは、ナビゲーションメニューのコンテンツに掲載しています。なお、タイトルはIDEOのTim BrownとJocelyn WyattのStandford Social Innovation Reviewの記事[2]を意識しています。

[1] http://www.dangkang.com
[2] Brown and Wyat, 2010

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