まとめと今後の展開

前回は、ソーシャルイノベーションのための構造構成主義的プロダクトデザイン手法の実践の最終回として、Wanic ToolkitとWanicシリーズを用いたビジネスモデルについて説明しました。ビジネスモデルについて説明するにあたって、まず、Wanicシリーズの製品ラインナップ、途上国・先進国を含む事業戦略を説明したのち、初期の事業展開先である東ティモールにおけるWanicシリーズのポジショニング、技術伝達を中心とした事業展開、ならびに、ビジネスモデルの考察について説明しました。

今回は、第25回目の記事、つまり、本ブログの最終回となりました。そこで、前半では、各章のまとめを行い、後半では、構造構成主義的プロダクトデザイン手法、Wanic/Wanic Toolkitの今後の展開について述べたいと思います。

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ソーシャルイノベーションの事例 – FabLab

前回は、ソーシャルイノベーションの担い手としての大学・研究機関の第3弾として、TU Delft Industrial Design Engineering(IDE)を選択し、その特徴、プロジェクトについて説明を行いました。IDEの場合、MIT D-Labや、Stanford d.schoolと異なり、明確なコンセプトは打ち出されていませんが、学位を取得可能な学部、修士課程、博士課程にてソーシャルイノベーションに関する研究を行うことができること、また、Philipsをはじめとする企業等の外部団体とのコラボレーションが盛んであることから、プロダクトとして社会に対する実質的な貢献が可能であることが特徴といえるでしょう。

今回は、ソーシャルイノベーションの担い手としての大学および研究機関の第4弾として、FabLab[1]を紹介したいと思います。これまで紹介してきた3つの組織は、研究者や企業がモノを開発し、製造し、普及させる、あるいは、そのモノを使ってビジネスを起こす、という視点に基づいていました。一方で、FabLabは、必要なものをみんなで作る”DIWO(Do It With Others)”を基本理念に置いています。FabLabはMITからスタートしましたが、すでに世界中に展開されており、ここ日本においても、2010年春にFablab Japan[2]が設立されて以来、注目を浴びつつあるだけではなく、2011年5月には鎌倉に日本初のFabLab[3]がオープンいたしました。

[1] FabLab Main
[2] FabLab Japan
[3] FabLab Kamakura

まず、FabLab Japanのウェブサイトよりファブラボとは何かについての具体的な説明を引用をしてみましょう。

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ソーシャルイノベーションの事例 - TU Delft IDE

前回は、ソーシャルイノベーションの担い手としての大学・研究機関から第2弾として、d.schoolことHasso Plattner Institute of Design at Stanfordを選択し、その特徴、クラス、プロジェクトについて説明を行いました。d.schoolの最大の特徴は、デザイン思考であり、さらに、コンピュータ技術、ビジネスに関連した要素がクラスに散りばめられていました。

今回は、ソーシャルイノベーションの担い手としての大学および研究機関の第3弾として、舞台をヨーロッパへと移し、TU DelftことDelft University of Technology[1]を紹介いたします。

[1] TU Delft

Stanford d.schoolや、MIT D-Labと同様に、TU Delftもまた、全ての学部でソーシャルイノベーションに取り組んでいるわけではありません。Industrial Design Engineering (IDE)プログラム[2]が中心となってこの領域に対する研究を行っています。IDEは、1965年に設立された、学部および修士・博士向けのプログラムで、”人々が使いたくなものを作る”をモットーに、病院のベッドからドライヤーまで、携帯電話からウェブサイト、企業CIまでをデザインしています。

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ソーシャルイノベーションの事例 - d.school

前回は、ソーシャルイノベーションの担い手としての大学・研究機関の第1弾として、MIT D-Labを取り上げ、12のコースの内容とそれぞれのコースの代表的なプロジェクト例を紹介いたしました。MIT D-Labの特徴は、”適正技術と持続可能性のあるソリューションの提供”と言えます。

今回は、ソーシャルイノベーションの担い手としての大学および研究機関の第2弾として、通称d.schoolことInstitute of Design at Stanford [1]を紹介いたします。

[1] d.school

d.schoolの正式名称は、Hasso Plattner Institute of Design at Stanfordです。ドイツのソフトウェア企業であるSAPの共同設立者、Hasso Plattnerが、35,000,000 USドル(約31億円)を寄付し、2005年にIDEO創設者兼CEO(当時)であり、スタンフォード大学教授のDavid Kelleyがディレクターとなって設立されました。David Kelleyがディレクターであることからも容易に推測されますが、d.schoolは、彼およびIDEOの影響を強く受けており、d.schoolのキーワードは”デザイン思考”と言えます。d.schoolはデザイン思考を学び、実践するための場と考えてよいでしょう。

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ソーシャルイノベーションの事例 - D-Lab

前回はソーシャルエンタープライズの事例として、大学発NPOのOLPCを紹介いたしました。OLPCは、寄付によって運営され、プロダクトであるXOシリーズを開発し、途上国の子供たちにラップトップを提供し、教育の機会を提供することで、途上国に活力を与えることをミッションとしていました。

今回からソーシャルイノベーションの担い手をソーシャルエンタープライズから移し、4回に渡って様々な大学や研究機関を紹介していきたいと思います。今回紹介するのはマサチューセッツ工科大学のD-Lab[1]です。

[1] D-Lab

D-Labは、D-Labの”D”は”Development though Dialog, Design, and Dissemination (対話を通じた開発、デザイン、普及”を意味しており、国際開発の枠組みの中で、適正技術と持続可能性のあるソリューションによる開発を育成するためのプログラムです。D-Labは、低コストの技術を用いた創造と実装を通じて、低所得の家庭の生活の質を向上させることをミッションとしています。

D-Labは、2002年にMIT教授であり、適正技術に関する発明家であるAmy Smithによって設立されました。受講資格については、MITの学生、もしくは、ハーバード大学、ないし、Cross-registrationに関する合意書を持つその他の機関に属する学生である必要があります。現在は、12の異なるコースが存在しています。以下では、12のコースの概要と代表的なプロジェクトを紹介していきたいと思います。

まずは、これまでに多くのプロジェクトとプロダクトを輩出した8つのコースについて説明しましょう。

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ソーシャルイノベーションの事例 - OLPC

前回はソーシャルエンタープライズの事例として、米国NPOのKopernikを紹介いたしました。Kopernikは、利益追求を目的としないNPO法人であり、一般市民(個人)、市民団体、会社/大学をオンラインで媒介する場、すなわち、オンラインマーケットプレイスとして機能し、マッチングのための場の提供するというビジネスモデルを選択していました。

今回取り合げるのはOLPC – One Laptop Per Child – [1]です。前回と同様に、NPOを取り上げるわけですが、Kopernikが元コンサルタントを中心に設立されたのに対して、OLPCはマサチューセッツ工科大学のNicholas Negroponte(ニコラス・ネグロポンテ)を中心に、大学発NPOとして、2005年1月に、AMD、eBay、Google、News Corporation、Red Hat、Marvellらの寄付により設立されました。

[1] OLPC

 

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ソーシャルイノベーションの事例 - Kopernik

前回は、ソーシャルエンタープライズの事例として、KickStartを紹介いたしました。KickStartは、地元の人々が起業家としてスモールビジネスを興すことによって、持続可能な社会の形成、雇用の創出、経済の発展に貢献するためのツールを開発し、そのツールを販売することで、利益を獲得するビジネスモデルを採用していました。

今回紹介するソーシャルビジネスの主体は、米国NPOのKopernik(コペルニク)[1][2]です。Kopernikの登記地は米国ですが、共同創設者兼CEOが日本人であることから、日本との関係が深く、日本支部も存在いたします。また、東日本大震災でもソーラーランタン、ソーラー・イヤー(補聴器)を被災地に届けるプロジェクトが実施されました。

[1] コペルニク(日本版)
[2] Kopernik(Global)

Kopernikは、”テクノロジーマーケットプレイス”としての自らの位置づけによって特徴づけられています。まずこの事業コンセプトに関する説明を上記ホームページから抜粋しつつ説明いたします。

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ソーシャルイノベーションの事例 - KickStart

前回はソーシャルイノベーションの場としてのBOPに注目し、語義的な起源、定義、その特徴について述べてきました。本blogのテーマである、ソーシャルイノベーションのためのデザイン思考、および、デザイン手法について説明する前に、これから7回に渡って、ソーシャルイノベーションの担い手としての、企業、NPO、大学、研究機関を紹介し、具体的なプロダクト、サービス、システムについて説明していきたいと思います。特に前半3回で紹介する3団体は、それぞれが異なるビジネスモデルを採用しており、ソーシャルエンタープライズとして成立しています。

今回紹介するのは、KickStart(キックスタート)[1]です。KickStartは1991年にMartin FisherとNick Moonによって設立されたApproTECを起源とし、2005年に名称を変更し、現在のKickStartとなりました。彼らは、KickStartのミッションを「数百万人の人々の貧困からの救出」と定めています。彼らは、ケニアやその他の国々における”持続可能な経済成長”と”雇用創出の促進”を目的として、小規模で利益を出せる企業を設立し、経営を行うことを目的とした起業家によって利用される技術に注目し、これを開発し、広めていくことで、この目的を達成しようとしています。

[1] KickStart

さて、彼らのビジネスモデルは、貧しい起業家が自分自身の手で利益を生み出すビジネスを作り出すために利用可能な、お金を生み出すシンプルなツールを開発し、販売し、普及させるための5つのステップを基本としています。この5ステップの原文と拙訳を以下に掲載いたします。

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キーワードとしてのBOP

前回は、イノベーションについて、その定義と派生系について述べてきました。今回は、ソーシャルイノベーションと密接に関わっているBOP – Bottom of the Pyramid – について説明をしたいと思います。最近では、BOPもバズワード化していますが、その起源と定義について改めて整理をしてみましょう。

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Innovation and Social Innovation

前回は、本blogのタイトルにも使用している2つのキーワード – デザイン思考とソーシャルイノベーション – に関して、それぞれの定義を中心に論じました。今回は、キーワードのうちの1つであるイノベーションについてもう少し掘り下げてみたいと思います。

イノベーションという単語は、企業広告、大学教育、研究、様々な場所で用いられ、それを目にする人も若干食傷気味かもしれません。何も考えずに単語だけ使用するとたまに恥ずかしい目に会うこともあるので、まずは整理しておく必要があります。今回は、イノベーションの起源から始まり、派生したいくつかのイノベーションの類型について述べていきたいと思います。具体的には、シュンペーターによるイノベーション、破壊的イノベーションと持続的イノベーション、オープンイノベーション、ソーシャルイノベーションです。これらのそれぞれについて、起源と定義をまとめてみましょう。

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