まとめと今後の展開

前回は、ソーシャルイノベーションのための構造構成主義的プロダクトデザイン手法の実践の最終回として、Wanic ToolkitとWanicシリーズを用いたビジネスモデルについて説明しました。ビジネスモデルについて説明するにあたって、まず、Wanicシリーズの製品ラインナップ、途上国・先進国を含む事業戦略を説明したのち、初期の事業展開先である東ティモールにおけるWanicシリーズのポジショニング、技術伝達を中心とした事業展開、ならびに、ビジネスモデルの考察について説明しました。

今回は、第25回目の記事、つまり、本ブログの最終回となりました。そこで、前半では、各章のまとめを行い、後半では、構造構成主義的プロダクトデザイン手法、Wanic/Wanic Toolkitの今後の展開について述べたいと思います。

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実践 – 東ティモールへの第2回フィールドワーク

前回より、ソーシャルイノベーションのための構造構成主義的プロダクトデザイン手法の実践について紹介をしています。前回は、実践の第2回として、私の参加した米国NPOコペルニク主催のSee-D Contestのプログラムである東ティモールへのフィールドワークのうち、ボボナロ県への第1回フィールドワークを題材に、「フィールドの概念抽出および現象マッピング」「ソリューションモデルの構築」のプロセスについて説明をいたしました。

今回は、構造構成主義的プロダクトデザイン手法の実践の第3回として、ラウテム県ロスパロス地区への第2回フィールドワークを題材に、「フィールドの概念抽出および現象マッピング」「ソリューションモデルの再構築」「プロジェクトの関心モデルの構築」のプロセスについて説明をいたします。

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実践 – 東ティモールへの第1回フィールドワーク

前回より、ソーシャルイノベーションのための構造構成主義的プロダクトデザイン手法の実践について紹介をしています。前回は、実践の第1回として、私の参加した米国NPOコペルニク主催の、途上国の課題を解決するプロダクトを開発することを目的としたSee-D Contestのプログラムである東ティモールへのフィールドワークを題材に、事前調査からデザイナの関心モデルの構築、そして、インタビュー項目決定までの流れを説明したしました。

今回は、私自身が参加したボボナロ県への第1回フィールドワークを題材に、「フィールドの概念抽出および現象マッピング」「ソリューションモデルの構築」のプロセスについて説明をいたします。

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構造構成主義的プロダクトデザイン手法

前回は、モデル構築がその研究の目的である場合においてSCQRMに採用されている分析ツールである、M-GTAについて、前身となるGTAについて説明したのち、具体例を示しながらその分析プロセスを紹介をいたしました。M-GTAの分析プロセスは、まず、文字おこしを行い、データ化したテクストの中から、キーワードを見つけ、キーセンテスを引いていき、これらに名前を付け(概念化)、次に、概念のまとまりごとに対して、見出しをつけてテクストを構造化し(カテゴリ化)、さらに、抽出された概念やカテゴリの関係を捉えて暫定的な全体像やモデルを素描する(理論化)というものでした。また、実際にM-GTAを用いて分析を行う場合に手続きとして作成する、分析ワークシートについて説明を行いました。

今回は、構造構成主義を理論的背景として、そして、構造構成主義に基づく研究法のひとつとして臨床心理学などの分野で用いられている構造構成主義的質的研究法(SCQRM)をもとにして構築された、ソーシャルイノベーションのための構造構成主義的プロダクトデザイン手法について説明をいたします。

まず、構造構成主義を採用した元来の目的との関連から、BOPというフィールドへの従来のデザイン手法の適用とその限界について再度確認しておきましょう。従来のデザイン手法は、グローバル市場におけるプロダクトデザインに特化したものであることはすでに説明いたしました。したがって、BOPという特殊性を持った特定のフィールドに対して最適化されたプロダクトを作るという目的に対して、従来の手法が最適ではないため、新たな手法を構築する必要があると説明いたしました。さて、ここで検討しなければならないBOPの特殊性とはどのようなものであったでしょうか?

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モデル構築手法としてのM-GTA

前回は、構造構成主義を超メタ理論(超認識論)とするメタ研究法である、構造構成的質的研究法(SCQRM)を紹介いたしました。SCQRMは、関心相関性を中核とし、11の関心相関的アプローチ[1]を備えていました。また、SCQRMでは、関心相関的存在論-言語論-構造論によって、構造構成的-構造主義科学論という科学論と、関心相関的構造構成法といった方法枠組みが基礎づけられています。このようなSCQRMは、モデル構築がその研究の目的である場合において、関心相関的選択に基づき、M-GTA(Modified Grounded Theory Approach/修正版グラウンデッドセオリーアプローチ) を分析ツールのひとつとして採用しています。

[1]関心の探索的明確化、関心相関的継承、関心相関的選択、関心相関的サンプリング、関心相関的調査(質問)項目設定、関心相関的方法(方法概念・研究法)修正法、関心相関的構造(理論・モデル・仮説)構築、関心相関的報告書(論文)構成法、関心相関的プレゼンテーション、関心相関的評価、関心相関的アドバイス)

今回は、M-GTAを用いたデータ分析手法ついて紹介いたします。M-GTAは、第13回で説明したように、グレイザーとシュトラウスによって提唱されたGTA(Grounded Theory Approach/グラウンデッドセオリーアプローチ) を木下が修正を施した分析手法です。まず、研究者(観察者) の問いを明らかにした上で、インタビューや観察を行ない、その結果を書き起こしたテキストを分析し、最終的にデータに立脚した(データにグラウンデッドな)仮説や理論を構築します。テキスト分析のプロセスでは、研究者は、研究者の注意を引くキーワードやキーセンテンスをコード化し、データ化します。そしてデータを構造化し、概念やカテゴリなどの関係を捉え、暫定的なモデルを構築します。

以下では、グレイザーとシュトラウスによって提唱されたGTAの手法とその限界について再度説明したのち、M-GTAを用いた分析プロセスについて、引き続き『質的研究とは何か – SCQRMベーシック編(以下、basic』『質的研究とは何か – SCQRMアドバンス編(以下advance)』をもとに、具体例を示しながら説明をいたします。

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構造構成主義的質的研究法(SCQRM)

前回は、既存のデザイン手法をBOPというフィールドに適用する場合の限界について述べ、その限界を打破するためのアプローチを構築するための足がかりとして、「現象学」と「構造主義科学論」の流れを組む超メタ理論であり、現象と関心に注目することで、人間科学において起きがちな信念体系同士の対立を克服し、建設的なコラボレーションを促進するための方法論である、構造構成主義の全体像について説明しました。構造構成主義的アプローチを導入することで、BOPというフィールドの持つ”特殊性”を構造的に理解し、提供者(デザイナ)と被提供者(ユーザとしての現地人)の信念対立を解消することが可能となります。しかしながら、このような構造構成主義それ自体は概念であり、思想であるため、デザイン手法として直接応用することは困難です。

今回は、構造構成主義を背景として持つ研究法のひとつとして臨床心理学などの分野で用いられている、”構造構成主義的質的研究法(SCQRM)”を紹介いたします。SCQRMは構造構成主義を超メタ理論(超認識論)とするメタ研究法で、関心相関性を中核原理とし、メタ方法論として、以下の11の関心相関的アプローチを備えています。

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既存のデザイン手法の限界と構造構成主義

前回は、デザインプロセスにおいて用いられてきた既存のデザインメソッドの紹介の第3弾として、「3. プロトタイピングを行う」プロセスにおいて利用可能なデザインメソッドであるデザインパタンを取り上げ、その起源、および、建築からソフトウェアエンジニアリング、HCIまでの変遷を追ってきました。特にHCIのデザインパタンについては、年代別に導入・発展・拡散の3つのフェーズに区分し、それぞれの特徴について説明をいたしました。また、現状のパタンの問題点として、決定論的パタンとしての限界、パタン同士を組み合わせて全体性を構築する際のデザイナ関与部分に関する問題について指摘いたしました。

今回は、既存のデザイン手法の限界、特にBOPというフィールドに既存のデザイン手法を適用する際の限界について、”構造”をキーワードとして論じたいと思います。その上で、打開策としての構造構成主義について説明をいたします。

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